内容説明
白魚鍋、兎汁、鰹飯、鮑の酢貝、白玉、秋茄子の塩もみ、豆腐の葛餡かけ、おかか雑炊、掻鯛、浅蜊と大根の小鍋だて。池波正太郎が描き出した、梅安と仲間たちの、おいしい食事の極めつきを、梅安好き、料理好きの専門家2人が解説して、作り方と共に供する好読物。巻頭に「池波正太郎梅安を語る」付き。
目次
春(鶏卵;白魚鍋;兎汁)
夏(鰹の刺身;芋川のうどん;角樽;蝦蛄の煮つけ)
秋(秋茄子の塩もみ;桑名の酒、魚;松茸;蜆汁;蕎麦と蕎麦屋)
冬(猪鍋;大根と油揚げの鍋仕立て;朝飯;根深汁;おかか雑炊;茶わん酒)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
16
映画を見ているような圧倒的なビジュアル感が楽しい池波ワールド。中でも特にダークな魅力を放つ梅安シリーズ。食事風景は楽しく、「小なべだて」にあこがれたっけ。宮崎駿さんのシンプルでおいしそうな食事(ハイジのチーズとかパズーの目玉焼きとか)と重なるものがある。時折読み返しては、その簡潔きわまる描写と計算された小道具にうなる。巧いなあ。にやり。 2017/02/16
キジネコ
14
池波ワールドのフリークス二人の薀蓄披瀝。藤枝梅安シリーズに見る「食」を切り取って語っています。蕎麦・豆腐・大根等の調理レシピがざっくり紹介されていて、またそれが凄く美味しそう、一つ一つ料理ノートに写し替える作業を楽しみました。梅安は生き死にの境に立ち、突然に訪れる自身の死も日々の覚悟とする仕掛け人。一食が持つ意味は重い、食べる喜びが、そのまま生きる喜びであり、「殺し」で失った心の均衡を取り戻す大切な癒しでもある、と語られています。ちょっと嫌味、旧弊ですが、それを差し引いても美味しい情報がてんこ盛りでした。2013/01/31
たびねこ
11
昆布の出汁を張った土鍋に千六本の大根とアサリの剥き身をさっと入れこれを七味で食す。小鍋だては、ゴタゴタ入れない。食欲がそそられる、そんな季節が近づいてきた。梅安と彦次郎のあの世界に久しぶりに浸りたくなる。2014/08/31
ドナルド@灯れ松明の火
11
鬼平料理番日記を読んだので、こっちも読んだ。昔なら感心しきりだったと思うが、今読み返すと、筒井ガンコ堂・佐藤隆介の薀蓄グルメ振りがいかにも池波正太郎の受け売りと言うことがわかり、少し鼻につく。それにつけても池波さんの名文と、季節感や梅安・彦次郎の精神や肉体の状態を表すための食事の模様や料理の描写が素晴らしい。すぐにでも作って食べたくなる。 でも江戸時代のようなおいしい魚や野菜が手に入らない今、唾を飲み込むばかりである。嗚呼。2012/01/03
シルク
9
池波正太郎氏本人が料理の解説をした本だと思って購入したが、残念なことに解説は別の人だった。でも内容的には、まあそれなりに楽しめる。通好みのつまみで酒を楽しむ梅安達がなんともうらやましい。最初に池波氏の談話も少し掲載されている。江戸時代は梅安のような裏稼業はともかく、一般人にとっては酒は高価なもので、たまにしか飲めなかったとのこと。これはもう現代に生まれたことにひたすら感謝するしかない。2018/06/11