出版社内容情報
【内容紹介】
大名題の家に生れ、類いまれな美貌で“江戸の華”と謳われた8代目団十郎。しかし彼は、肉親との葛藤に悩み、芝居町を弾圧するご政道に不安をつのらせ、ついに仇持ちの浪人宮永直樹への破滅的な愛にのめり込む。謎の死に至る団十郎の伝説的な生涯を、江戸歌舞伎を背景に描いた、初期の代表的長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tkr
1
素晴らしかったです。歌舞伎のこと知らないけれども、まるでその世界のそばで見ているような気になるほどの臨場感がありつつ、あっさりとした展開と風情の美しい描写、そして綺麗なところ醜いところひっくるめての生々しい人間関係…杉本先生の鋭い洞察力に感服〜。愛憎が交錯してるけど、耽美になりすぎず、どろどろした世界のはずなのにどこかさっぱりしてる文体なので読みやすく、その中に歴史の深みが組み込まれているから読後感が凄い作品だった。団十郎!健気…駒三、重蔵、小菊、直樹はじめ多くの登場人物いたけどうまく絡み合って…凄い2023/06/29
ハツミ
1
再読。川へ身を投げた少年を助けた浪人・直樹。その少年は後の八代目団十郎、市川海老蔵だった。それが縁となり成田屋に学問の先生として迎えられた直樹に、海老蔵は想いを募らせて……って久しぶりに読んでも飛ばしている話だった。過去のある浪人×歌舞伎役者。団十郎はどう読んでもドMですありがとうございました(ありがたくないけど)。小菊ちゃんを巡る鞘当ては微笑ましかったのに、こっちも結末が悲しすぎるよなあ。直樹と団十郎は仕方がないとして、こっちは幸せになって欲しかった。2011/02/19
むねくに
0
江戸時代の劇界の話というだけで随分特殊な世界だが、非日常的な人間関係から予想される悲劇に向かっていく物語の展開は案外解った気がする。気がするけど、つくづく人は精一杯生きるべきだと思います。2014/10/11
sorajiro1220
0
天保の改革があたえた歌舞伎への影響も描かれていて、とても興味深かったです。あと個人的に坂東玉三郎(しうか)がいい味を出していて、作中で一番好きでした。2014/06/20
33
0
幕末の歌舞伎界のドロドロした愛憎劇。団十郎の純粋な愛情と過去の罪のため苦しみ続ける直樹の叶わぬ恋愛の行き着く先は……。文章自体は易しく現代っぽかった。2009/06/28