内容説明
壮大なギリシャ神話の一大要素、トロイア戦争を主題とするギリシャ、ラテンの古典作品は数多い。しかし、いずれもが戦争の一部を記すのみで、その全容を語るものはない。本書は、これら古典群の記述をジグソーパズルを組み上げるように綴り合わせ、発端から終焉に至るまで、戦争の推移と折々のエピソードを網羅して、その全貌を描いた物語である。
目次
第1章 女神と人の結婚
第2章 ギリシャ軍の集結
第3章 トロイアの戦塵
第4章 アキレウスの最期
第5章 ギリシャ軍の頼みの綱
第6章 トロイアの木馬
第7章 トロイア陥落
著者等紹介
松田治[マツダオサム]
1940年、奄美大島生まれ。東京教育大学文学部卒業。東京大学大学院修士課程修了(西洋古典学)。流通経済大学、つくば国際大学教授を歴任。2006年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ずっきん
80
膨大な原典を元に「トロイア戦争について知りたければ、この一冊で十分だ」と執筆されたもの。おっしゃる通りとてもわかりやすい。さらにピカードの『ホメーロスのイーリアス』を読んだばかりだというのに滅法面白かった。神々の気まぐれと、戦士達の無節操な下半身が繰り広げる壮大な昼ドラ戦記。いや、深夜枠だな。百年どころか数千年残ってる物語ってやっぱすごいね。松田氏の迷訳については事前情報をもらってたんだけど、それも含めてすごく楽しめた♪ 入門書ではあるけど12神と粗筋くらいは把握しといた方がいいと思う。2022/06/04
Saiid al-Halawi
9
丁寧に前後関係も含めた概説だし、すっきり物語としてまとまってるので分かりやすい。トロイア戦争以外を読む際にも起点として参照できると思われる良書。パラメデス悲惨杉泣いた。2013/10/10
TSUBASA
6
トロイア戦争の流れをわかりやすく追った本。登場人物がどんな人物かを出てくるたびに再確認するような書き方がされていたり、「何が原因でこうなったのか」など細かな所も端折らず、実に読みやすく作られていた。作者の目標である「トロイア戦争の事を知りたければこの一冊で十分だ」と言葉に違わぬ出来である思う。これを足がかりに元の書物をあたってみるとトロイア戦争がより面白くなるだろうなぁ。2009/10/18
ホームズ
6
トロイア戦争の流がわかりやすくって良いですね。これを読んでから『イリアス』『オデュッセイア』『アイネアス』『トロイア戦記』などを読んだほうがつかみやすいですね(笑)ほかの方も書いてますがヤッパリ地図があったほうがいいですね(笑)2009/07/02
みのくま
4
本書から改めてトロイア戦争を俯瞰してみると、かなりこの戦争は歪められて認識されているのではないかという気がしてならない。西洋vs東洋の原初的体験として後のギリシアvsペルシアや十字軍遠征、近代以降の植民地主義にまで影響を及ぼしている結果だろうと思う。だがトロイアとギリシアにそこまでの差異を感じない。共にギリシアの神々を信仰し、血縁関係まであるのだ。そしてより重要な事は、共に「滅びた」という事である。トロイア戦争時代のギリシアはミケーネ文明であり、これもまた後世の二項対立的歴史観では捉えきれない要素なのだ。2023/07/09