講談社学術文庫
“戦前”の思考

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  • サイズ 文庫判/ページ数 272p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784061594777
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0110

内容説明

「共産主義が終わった」「五五年体制が終わった」―。二〇世紀最後の十年は「終わり」が強調された時代だった。そして、それは戦前の風景に酷似している。あの戦前を反復しないためにこそ、自身を“戦前”において思索することの必要性を説く著者が、明晰な論理展開で繰り広げる思考実験。ネーション=ステートを超克する「希望の原理」とは何か。

目次

帝国とネーション
議会制の問題
自由・平等・友愛
近代の超克
文字論
双系制をめぐって
自主的憲法について
韓国と日本の文学
湾岸戦時下の文学者

著者等紹介

柄谷行人[カラタニコウジン]
1941年兵庫県生まれ。東京大学経済学部卒。同大学院英文科修士課程修了。文芸評論家。漱石論により群像新人文学賞、『マルクスその可能性の中心』により亀井勝一郎賞受賞。元法政大学教授。現在、近畿大学文芸学部特任教授、コロンビア大学比較文学科客員教授。著書に『畏怖する人間』『意味という病』『反文学論』『日本近代文学の起源』『内省と遡行』『言葉と悲劇』『探究I・II』『終焉をめぐって』『ヒューモアとしての唯物論』『坂口安吾と中上健次』がある
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感想・レビュー

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mm

24
講演の記録なので読みやすい。読みながら何度「なるほど。。」と呟いたことか。日本語が漢字・かなの併用表記という手段を持つため、外来の観念は漢字・カタカナで表される。このとは、これらの言葉の中身がいつまでたっても輸入物で国産じゃないという選別を意識し続けていることにつながる。日本はよそからやってきた概念を血肉化しない。もひとつネタを。自分から選び取ったものというのはいつ辞めても捨てても良いわけで、絶対的な拘束力を持たない。神も自分で考えて入信したっていうのは、やめる自由もあるわけで、継続性においては弱い。続→2018/09/19

壱萬弐仟縁

23
1994年初出。産業資本主義がネーション=ステートと結びついていることは、重要(11頁)。資本そのものはトランスナショナル(12頁)。デモクラシーで重要なのは、人民の意志が基底にありながら、何であるのかを誰もいえないことにある(48頁)。シュミット曰く、民主主義の本質は、人民の同質性で、異質なものを排除することにあるという(56頁)。自由と平等は背反する(69頁~)。平等は、富の平等(分配的正義)を意味していなければならない(72頁)。2015/09/29

amanon

4
講演集ということで読みやすいが、内容はかなり高度。それから著者後書きを読めばある程度納得できるが、このタイトルは本書の内容をちゃんと言い表しているように思えないというのがちと気になる。それにしても、本書が世に出てはや二十年を経ても、柄谷が投げかける問題意識は今日でも殆ど古びていないということに驚かされる。折しも偏狭なナショナリズムが勃興し、国民不在のまま重大な法律がすんなり通ってしまう昨今。そんな中で本書が掲げるナショナリズムや議会政治、自由についての言説は読者に少なからず示唆を与えるに違いない。2014/10/16

カラス

3
講演録なのでとても読みやすい。一貫しているのは、「転倒」を暴き出すというスタイルで、『近代文学の起源』の変奏に見える。独特の日本人論で、歴史性を踏まえた上で日本人の個性を語るべきであり、超歴史的な「個性」が存在するかのように仮定するのは間違いというスタンス。『文字論』において語られた、漢字仮名交じり文という表記法こそが日本人の個性を決定づけているという論は面白かった。しかし、いくら識字率が高いとはいえ、文盲の人も結構いただろうに、それはどうなん?、とも思った。2020/01/07

ピラックマ

3
<戦前>の思考とは文字通りではなく 戦争前夜の思考とはいかにって意味。なんとなくナショナルな風が強くなってきた昨今是非読むべき本の一冊。 内容は以下の講演集 ・帝国とネーション ・議会制の問題 ・自由・平等・友愛 ・近代の超克 ・文字論 ・双系制をめぐって ・自主的憲法について ・韓国と日本の文学 ・湾岸戦時下の文学者   柄谷氏の本を読むと知的興奮は凄いんだけどヒトが言語を持ち交換を始めた時からもうどうにもならないんじゃないか?といつも絶望する。2011/12/13

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