内容説明
日本の遅れた医学を改革しようと、杉田玄白、前野良沢らは西洋の「解剖図」の翻訳に挑戦する。三年半の年月を経て、一七七四年オランダ語版『ターヘル・アナトミア』は『解体新書』として完成をみた。辞書のない時代、「門脈」「神経」など現代も使われている用語を造りながらの難事業であった。本書は、医学界のみならず、その後の蘭学の隆盛に貢献し、日本文化が大きく変容する契機となったのである。
目次
解体大意篇(解剖学総論)
形体名目篇(形体、名称)
格致篇(からだの要素)
骨節分類篇(骨、関節)
骨節篇
頭、ならびに皮毛篇
唇口篇
脳髄、ならびに神経篇
眼目篇
耳篇〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ryoichi Ito
6
復刻版(西村書店,2016)と合わせて斜め読み。原著は漢文で書かれている。当時の教養ある医師は漢文の読み書きができたようだ。今の日本人より語学力は上だったのではないか。また,四人の著者名の欄に,「日本 若狭 杉田玄白」などと国籍を書いていることに注目。この翻訳書を日本のみならず中国その他の漢字文化圏の読者にも読ませようとしたにちがいない。小川鼎三による「解説」も素晴らしい。2018/07/19
Yossan
3
教科書で聞いたことがあっただけで、興味本意で読んでみました。内容はひたすら解剖の説明と描写でしたが、当時の医学に触れられ、楽しめました。2020/02/28
ikatin
3
はっきりいって誤訳だらけというだけあって、現代語訳でもところどころに整合性に欠く記述がみられます。原著はさぞかし大変なものだったのでしょう。しかしやはりその価値は高いものと実感します。医術における解剖学の重要性について述べてある凡例のところは医学生の皆さんににぜひ読んでもらいたいです。2010/05/08
Sleipnirie
1
杉田玄白の漢方ディスり2022/02/10
ぎゃり粉(ぎゃりこ)
1
堅苦しい内容を予想して読んでみると、確かに予想通り内容はほとんどちんぷんかんぷんだったが、現代語訳にあたっての断りや、杉田玄白の「なぜ」「どう」臨んだかが書かれた凡例の時点で熱意や親切さのようなものが見えて非常に良い本だと思った。 何かを説明する側、される側の視点が異なることが強く意識されている。 本文内でも杉田玄白の予想や感嘆が随所にあり、まるでそばで翻訳作業を聞いているように感じた。 最後の解説で語られる時代背景も興味深くおもしろかった。2018/08/20