内容説明
あるがままの自然への慈愛と共感、失われゆく野生への哀惜の情をみずみずしい感性でつづり、自然が自然のままで存在しつづける権利や、人間と生態系との調和を訴える先駆的思想を説く。そのしみじみとしたエッセーがソローの著作とならび称される一方で、自然との共生の思想により環境保全運動を支える役割をになってきた本書は、環境倫理の確立が強く叫ばれるいま、必読の古典的バイブルである。
目次
1 砂土地方の四季(一月・一月の雪解け;二月・良質のオーク ほか)
2 スケッチところどころ(ウィスコンシン;イリノイとアイオワ ほか)
3 自然保護を考える(自然保護の美学;アメリカ文化における野生生物 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しまゆう
4
「土地倫理」の提唱者である著者。共同体の概念を土地、つまり生物相全てを包括したものへと拡張していく。しかるに倫理の対象も伴って拡張していくというもの。それが土地倫理(ランド・エシックス)。自然保護を保護者、被保護者の二項対立で捉えずに、脱人間中心主義の嚆矢となっている。非常に読みやすい語りかけで、エッセイとしても良い。挿絵のスケッチが美しい。2015/12/18
GA
2
環境倫理学の根幹にあるようなエッセイ。豊かな自然への洞察による言葉の数々は素晴らしい。原文で一度読んでみたいと思う一冊。 大学一回生で本書を読んだときの衝撃は今でも忘れられない。本書とヘンリー・D・ソローの「森の生活」は私の思想形成において最も重要な著書であったと思う。 今の資本主義に基づく市場社会には相性の悪い部分の多い考え方かもしれず、偽善的・理想主義的に捉えられてしまうかもしれないが、本書の先にある未来に期待したくなってしまう。
壱萬弐仟縁
2
「人間は、ほかの生き物たちと同じく、共に進化という遍歴の旅を歩む旅人の一人にすぎないということである」(176ページ)ということは、当たり前のようでいて、実は、できていないので、原発事故を収束できない。他の動植物にも放射能の影響を及ぼすのだから、自然との共生はできない。時折でてくる小鳥たちなどのスケッチが非常に繊細である。自然区域に稀少価値があるということ自体が、宣伝と開発を促し、努力を台無しにする(269ページ)という逆説もあり、世界遺産制度もそうした性質をもつことを考えておきたいと思える。2012/08/07
Yoshi
1
自然を中心に活動し始め、その中で土地倫理という概念の詳細を知りたく通読。 個人的には1部、2部の話のが面白く、自然観察の書としても非常に楽しめた。 土地と人間を共同体として考えてその中でのエネルギーの循環を考える、と言った事なのだが対角に出される経済の話が唯物的な視点で縛られているので、現代の発展した経済学におきかえるとそこに疑問が生じる。 これらはおそらく、飢えず裕福にならないとおそらく実践できない考え方で、飢える人がいなくなり、資本主義の次の段階にこうした倫理を踏まえた社会が来ることは想像できる。2020/12/10
さえ
1
土地倫理に言及した部分のみ2016/06/23