内容説明
中国唐代は高名な詩人を輩出したが、なかでも李白と杜甫はひときわ強い光を放っている。七四四年、この両者は唐の副都洛陽で世に名高い奇跡的な邂逅をした。本書は、この時から一年余の交遊を振出しに、広大な中国全土を旅から旅へと明け暮れた二人の変転きわまる生涯をたどり、さまざまな詩の形式ごとに李・杜を比較、考察する。現代語訳をこころみ、李白の奔放、杜甫の沈鬱を浮彫りにした意欲作。
目次
1 出会い
2 李白(僻地の神童―蜀中二十五年;栄光を、ただ栄光を―漫遊十六年;翰林院の鸚鵡―長安二年;逐臣流離―漂泊十二年 ほか)
3 杜甫(家門の誉れ―三十五歳まで;動乱の渦中で―抑留、脱出、そして失意;飢餓の旅―秦州へ、さらに同谷へ ほか)
4 李白の文学と杜甫の文学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひよピパパ
10
杜甫と李白の人と詩を、わかりやすいタッチで描く。李白は脱俗的で飄々としているイメージをもっていたが、意外と権力志向があることに驚いた。また、杜甫は杜甫で、文章はまるっきり駄目で、詩でしか物を言えないというところが笑えた。杜甫と李白の違いについては、同著者の『本が好き、悪口言うのはもっと好き』所収の「ネアカ李白とネクラ杜甫」がコンパクトでオススメ。2019/04/20
本とフルート
4
漢詩の詩人として名高い李白と杜甫。二人を比較し、その魅力を明らかにする。杜甫には感嘆するけれど、李白の方に惹かれるのは、私だけではないらしい。人の生にとっては長く広いこの地球上で、李白と杜甫の邂逅が会ったという奇跡をしみじみと感じた。高島俊男さんのご冥福をお祈りします。2021/05/03
kj54
4
高島先生30代前半、単著デビュー作。膨大な資料を、可能な限り噛み砕いて再構成し、わたしのように無知な読者でも楽に消化できるようになっている。2人の偉大な詩人の人生と試作が親しい友人のように感じられる。2016/03/28
ポルターガイスト
4
とても読みやすい。人物史としても文学解説としても最高。作者のサービス精神旺盛。2014/12/29
in medio tutissimus ibis.
3
唐代就職活動残酷物語。とにかく就職がうまくいかなくて、読書階級仲間の家を梯子して宴に侍り食わせてもらう。後代の評価が天元突破してる分だけ意外に過ぎる。けれども、その理由は究極的には有力者におべっかを使って引き揚げてもらうしかない状況にあって、彼らが最後にはプライドをとってしまうからだと分かると、この高名な詩人には一通りの尊敬などではなく、痛切な共感を覚えずにはいられないだろう。先人の忖度や付会を退け、詩と人間性の弱点を容赦なく描き出されるほど、その中に光る美点もまた輝く。その描き方のバランスが非常にいい。2021/05/03