内容説明
科学革命以後の近代科学を絶対普遍とみなし、科学史を単線的進歩の過程と捉える硬直した歴史観と対決することは、科学史の第一人者である著者の終生の課題である。魔術・錬金術・占星術など、従来は擬似科学としか評価されなかった西欧中世のオカルト・サイエンスを厳密な方法論により分析。科学革命前夜の神秘思想やヘルメス主義の諸相を論じ、謎に充ちたルネサンス期科学を照射した画期的論考。
目次
踏み出す第一歩
方法論の問題
神秘思想の評価
プラトニズム・ルネサンス
十五世紀対抗文化の諸相
錬金術の展開とその意味〔ほか〕
感想・レビュー
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富士さん
2
再読。本書の要点は現代中心の歴史観への懐疑とサブカル的神秘思想の正当キリスト教との合体を特徴とするルネサンス観の二つだと思います。歴史観の問題は、村上先生の“正面向き”が正解だとするのではなく、一つのものに固定させないというのが重要でしょう。ルネサンス観については、P.ファイアーアーベントさんや飯塚信雄さんの論を思い出し、刺激的でした。神秘思想の際限のない想像力こそ、ルネサンス期の豊穣な科学的成果を生み出した土壌となり、経験に縛られて枯化していくヨーロッパ社会に若木を接木してきたのだろうと思いました。2015/10/21
あろんそ
0
冒頭のていねいな検討がたいへん勉強になり、科学というものについてよく考えるきっかけになった。これまでは近現代科学の観点からの科学史しか知らずに来てしまったので、中世の科学とその周辺の知識をもっと補強してもう一度読みたい。2012/02/10