内容説明
“心”と“身体”―デカルト以来の近代西洋哲学が幾度となく究明を試みたその問題は、東洋思想の照明を受けつつ、今日最もヴィヴィッドな課題として我々の前にあらわれている。哲学者であり、ユング心理学や「気」の研究の先頭走者でもある著者は、現象学、生理心理学との通路を縦横に結びつつ、東洋的「心身一如」論の現代的意義を浮かび上がらせる。海外の思想界に影響を与えた英語版を文庫化。
目次
序説 研究の目的と問題の概観
第1章 近代日本哲学の身体観(和辻哲郎の身体観をめぐって;西田幾多郎の身体観をめぐって;東洋思想研究の態度と方法)
第2章 修行と身体(修行とは何か;芸道論;道元;空海)
第3章 東洋的心身論の現代的意義(現代の哲学的心身論とその問題点;心身関係の二重構造;東洋的瞑想の領域)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yutaro sata
28
ある一点まで抽象しきって、時間的な存在として人間を把握する西洋哲学の伝統に対して、身体、及びその周りに広がる空間を重要視する東洋思想という対置の仕方。修行に重きが置かれるのは、それが、身体内部へ潜っていくことにより、心理、生理、物理の壁を取っ払って、統合して、身体の理解をより深めていくために必要な作業だと著者は考えているからだ。 正常以上の状態に達しようと鍛練する。その鍛練の先に身体状態の変容があり、その境地に立つことでしか見えてこないものがあるという身体優位の思想は、身近だ。2023/11/18
よたか
4
西田哲学が理解できたような気がした。明るい意識と暗い意識という構造は東洋哲学や精神分析を理解する手助けとなる。2022/11/20
yutayonemoto
2
【拾い読み】論の展開の意図はわかるけど、形而上学になっている?非常に広範は知識を土台にしているので教養に良い。ちゃんと理解していないだろうから、時間のある時にもう一度頭から読んでみたいと思った。2016/05/25
A
2
西洋の形而上学は、形而下的なものと断絶し、外なる自然の経験の彼方を目指すのに対して、東洋の形而上学は、形而下的なものと相互に浸透し合っており、内なる自然である心の奥底への没入の彼方を目指す。その心の奥底への没入が東洋宗教における修行で、心と身体を心身一如の状態に高め、自己の魂を形而下から形而上へと発展させるためにあり、修行による悟りによって形而上的次元の洞察に到達するのだという。頭で理論を構築するだけで、身体的な実践を疎かにする西洋哲学の考え方の限界が露呈した現代において、2015/07/05
odmy
1
ずっと前に買って積読のままだった本。なんで買ったのかもう覚えてないけど、大事なことが書いてあるような気がして読んでみた。でも、そうでもなかった。東洋哲学の立場から、心身二元論を乗り越えた新しい哲学を構想しているのだと思う。でもこの哲学が扱えるのは、宗教的な悟りや芸道におけるフロー状態のような、現代社会の中では極めて狭い領域の事柄に限られている。東洋哲学がいくら頑張っても、現代社会がそもそも西洋の科学と哲学を基礎に成り立っている以上、たいした影響力は持ち得ないのではないか。2023/09/27