講談社学術文庫
砂時計の書

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  • サイズ 文庫判/ページ数 269p/高さ 15X11cm
  • 商品コード 9784061589179
  • NDC分類 535.2
  • Cコード C0110

内容説明

暖かな書斎の一隅で、白い砂粒が音もなく滑り落ちていく。この静謐を、知的観想の時を、わたくしたちはいつくしむ。砂時計は地球的時間の象徴である。夜明けとともに起き、一頭の獲物を得るまで狩りをした“アド・ホックな”行動様式の忘れ形見である。自ら作り出した歯車時計に支配される近代文明の逆説を、ドイツの文豪ユンガーは勁く静かに批判する。古今の文献を駆使して語る、ユニークな宇宙論。

目次

砂時計の情感
時計と時間
砂時計
治療薬としての砂時計
新しい地球的要素の時計

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1 ~ 1件/全1件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

40
砂時計への愛着から書き起こされる時間に関する考察。歯車の発見により、すべてのものが均一・周期的に機械的に進行していくようになった近現代の世界のなかに取り残された「静止せる前コペルニクス的異物」砂時計。歯車時計の創るこの空間のなかで、祈祷や船の当直という人間の行動自体を計ってきた砂時計の「現在ももっているはずの意味」を掘り起していく過程で示される時間は、時代や時計の発展により変化していき、多彩で豊か。それを語る文章もとても味わい深く、砂時計の発する「ある独特の鎮静作用」に浸されたような気分で本を閉じました。2017/02/13

misui

10
時計のバリエーションを並べつつ技術の発展史を展開し、人間の行動様式に依る「アド・ホックな」砂時計の時間と歯車時計に代表される機械的時間を対置する。現在全地球を覆っている機械的時間は技術によって生み出された抽象的な時間であって、数値化されたそれは人間を工業力として動員する。時間意識に再考を迫るという意味ではこれほど「使える」本とは思わなかったし、ユンガーの著作を貫くテーマを端的に示しており興味深く読んだ。文章の美しさも見逃せない。2015/05/02

ndj.

9
「砂時計は地球的時間の象徴である」。古き良きヨーロッパそのもののような、静謐と落ち着き。砂時計はそもそも祈祷の時間をはかるためのものだったそうである。「影はさすらってゆき、水は滴ってゆき、砂は漏れ落ちてゆき、火縄は燃えてゆく。(…中略)これらの時間は、あくまで滑りゆく、流れゆく、漏れゆく、減りゆく時間である」。文章も美しい。少々懐古趣味に過ぎるきらいがあるけれど、歯車時計に支配されないゆったり穏やかな読書に。2016/08/29

ヴァルカン

3
我々の時間認識を時計という視点から詩的に判り易く論じた本。 影のさすらいや水の滴りに見られる流れゆく時間から、歯車時計の跳躍する断絶された時間への意識の変化はベルクソンの流れの哲学と空間化された時間意識を彷彿とさせる

ちいくま

2
蔵書 「幽霊屋敷の文化史」を読んでる時にふと「ゴシック様式の大聖堂が、空に向かって飛び立っていくような浮遊感を感じさせる」というフレーズが浮かび、何かで読んだ、何だった?と数日かけて思い出したのがコレでした、久々に再読しました。とにかく文章がすてき。初読30年程前ですが、今読んでもうっとりする表現がたくさんあって深く読み込んでしまいました。2015/12/03

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