出版社内容情報
【内容紹介】
月の上から見ると地球は太陽を中心にまわっている――本書は、天動説が主流の17世紀に、ケプラーが太陽中心の地動説に基づいて書いた史上初の近代科学的「月旅行物語」である。主人公は、精霊の力を借りて月にたどりつき、地球では経験したことのない天文・気象現象、地形、生物に遭遇する。未知の世界に想像の力で挑むという精神は、ジュール・ベルヌ、H・G・ウェルズらに受けつがれ、彼らの宇宙旅行物語に多大な影響を与えた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みのくま
8
地動説を説明する為に月から色々なものを観測する、という手法は興味深い。また、月の地形や生物などについての言及も多く、ケプラー自身はかなり真面目に考えていたようだが、現代から見るとまるでSF小説の設定のようだ。当時の欧州の天文学は天動説であり、月面はつるつるしており、太陽に黒点はあってはならなかった。ケプラーはガリレオを参照しつつ、これらの常識を本書で覆そうしていたのだろう。他方、自身の母が魔女裁判の犠牲になった事が、この小品に付随する註の量と関係しているようだ。とはいえ直接それに言及されているわけではない2022/03/06
うえ
8
「夢の中では、決して感知されないものさえ創案できる自由がときどきある。だから…諸球がエーテルの大気を切って進むことから風の存在を仮定してみた。思い出すと、地上に生育するものすべてにとって朝が健康によく快適な理由、また、熱帯地方でさえ多くの山の頂上に雪が残っている理由を論じたとき、私はこの原因を否定しなかった」「人間を、われわれが一団となってみんなの力で下界から天空へと押し上げる。出発にあたって人間の体はたえず激しいショックを受ける。…それゆえ前もって麻酔剤やアヘン剤をかがせて…眠らせておく必要がある」2019/11/13
シャル
5
天文学の世界に大きな功績を残したケプラーの書いた物語。小説というよりは月に行き、そこから地球はどう見えるかというシミュレーションの部分が大きいのもある意味でSFらしい。物語本編よりも、作者の注の方が分量的にも多いのもその印象を強くする。しかし、17世紀にここまで詳細な空想が出来るのも、作者のたぐいまれなる能力のたまものか。2010/06/22
kottono
2
序盤がファンタジーかと思いきや、がっつりの理系本だった。かなりマニアックで天文学の知識が足りない私には手も足も出ませんでしたが…orz。もし、月に居たら、地球などはどう見えるかを書いた論文的SF。文章自体は60ページ程度だが注釈などがついている。注釈まで読むと確かにSF。2014/02/25
Rachel
1
あのケプラーが書いたSF!SFのハシリだという。すごく気合の入ったSFで、ほぼ解説である。この解説がまたなかなか面白いし、冒頭のケプラーの息子による序文も良い。天文好きは読もう。2017/06/10