出版社内容情報
【内容紹介】
平安末期成立の『とりかへばや』は、女性的な気質の兄君と男めいた気性の妹君とが、それぞれ女装男装して、華やかな宮廷生活に悲劇喜劇の渦をまきおこす物語。第3冊秋の巻は、妊娠した男装の姫君が、相手の男の宇治の別荘に身を隠し女装にもどって出産。妹の身を案じ男装にもどって京を脱出した兄君と再会し、吉野山で日をすごすが、兄は妹の演じていた右大将に、妹は兄の演じていた尚侍になりすまして京にもどるまでの話(全4巻)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
16
当時、人が自殺するということは、 たいへんな罪悪であった(26頁)。 右大将を死なせる設定はない。 妊娠した男装の姫君、と裏表紙 にあるが、想像するだけでも 滑稽ではあるまいか。 2014/05/23
いりあ
7
平安時代後期に成立した作者は不詳の物語です。関白左大臣の2人の子供が、男児は「姫君」として、女児は「若君」として育てられることとなったことから始まる物語です。平安時代にTSFモノが存在する日本の変態性は凄いなと単純に感心したりします。本巻では妊娠してしまった姫君中納言が女装に戻って出産、これをきっかけにして、それぞれが元の性別に戻ります。はてさて、この後2人はどうなるのでしょうか。女性として過ごし時間が長いので、男性に戻っても女性の気持ちが手に取るように分かり、恋多き男になったのかな?2020/05/11
CaLiLa
7
入れ替わった右大将に気付かない人たち(笑)妹君の心情の描写はなんか共感できるが、兄君……男は男だったのね…いきなり恋多き男になってしまって……。2012/05/22
たねひ
6
この巻が山場か。いよいよ、男装していた女君と女装していた男君が入れ替わる。宇治川でのすれ違いや、月の夜に再会する場面が印象的。男君は、急にヤリチンになってしまったなあ。まあ、尚侍として出仕した当初から、女東宮にこっそり手を出すような奴だったけど。兄弟としては頼りになるけど、男としては、権中納言より数段ろくでもない気がする。普通の自立心が強い女性とその恋人の間にも、女君と権中納言のような気持ちの食い違いというのはありそう。案外、作者の実体験が反映されているのかも、というのは考えすぎかな。2015/06/14
hikarunoir
5
結末は世間体やタブーに屈してでも世界と折り合い「〜たい」兄妹の願望だろうが、理想と離れ、独り残された現実への目配せには諦念も感じる。2017/08/15