出版社内容情報
【内容紹介】
平安末期成立の『とりかへばや』は、女性的な気質の兄君と男めいた気性の妹君とが、それぞれ女装男装して、華やかな宮廷生活に悲劇喜劇の渦をまきおこす物語である。物語名は、異常な兄妹のありようが、入れかわって正常になってほしいと願う父親のつぶやき―取りかえたい―による。第1冊春の巻は、男装の姫君中納言を中心に、彼女が肉体関係なしに妻としている右大臣家の四の君に裏切られ、秘密保持に苦しむまでの話。(全4巻)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
18
あらすじ→原文→現代語訳→語釈→鑑賞、 の順番。 素人ゆえに現代語訳と鑑賞で。 平安末期から貴族社会の人々の 出家遁世に対する関心を反映する 箇所もある(89頁)。 和歌に、「そよやその 常なるまじき 世の中に かくのみものを 思ひわぶらむ」 (85頁)がある。 無常な世の中。 女のほうから歌を送るのは、 よほどの感情の高まりという(107頁)。 肉食系女子ってのがいたのかな? 一度許せば、逢う機会は二度三度 と重なる(151頁)。 男女間ではそうだが、 ビジネスでもリピーターを確保したい。 2014/05/23
いりあ
9
平安時代後期に成立した作者は不詳の物語です。「とりかへばや」とは「取り替えたいなあ」と言う意の古語で、関白左大臣には2人の子供がおり、1人は内気で女性的な性格の男児、もう1人は快活で男性的な性格の女児。男児は「姫君」として、女児は「若君」として育てられることとなったことから始まる物語です。今、読んでもとても面白い作品です。最近はジェンダーの観点から評価されているとも。本作をアレンジした作品として氷室冴子の小説「ざ・ちぇんじ!」が有名です。まずは「ざ・ちぇんじ!」から始めてみては?2020/05/09
くり坊
8
子供の頃、氷室冴子さんの『ざ・ちぇんじ』の後に手に取ったときには途中で挫折したけど、いま読んでみると、とてもおもしろい。(まあ、小・中学生には無理だったよね)2015/01/18
たねひ
6
宮廷でもてはやされる二人組の貴公子、密通による望まぬ妊娠、山里に住む世捨て人の親王など、王朝物語における定番の設定をなぞっているのに、主人公が「男装して男として生活する女」だということで、少しずつ定番の展開から外れていくのが面白い。中納言自身はかなり悩んでるのに、男として暮す娘や女として暮す息子を両親が意外にあっさり受け入れていて、脳天気なかんじ。でも、男の子をお后にするのはいくらなんでも無理だと思う。中納言が今で言う性同一性障害なのか、それとは違うのか、よく分からない。尚侍の方は違うっぽいけど。2015/05/18
hikarunoir
5
結末は世間体やタブーに屈してでも世界と折り合い「〜たい」兄妹の願望だろうが、理想と離れ、独り残された現実への目配せには諦念も感じる。2017/08/15