内容説明
隅田川にイマジネールな「情緒」を発見し、大量の地誌・民俗誌を生産消費する江戸民衆。徂徠と篤胤、広重と北斎の視線のちがい、『八犬伝』に潜む都市下層民の病んだ無意識をとおして、江戸の都市空間を権力論の視点から捉えた力作。
目次
第1章 無意識の発見―江戸の都市空間と民俗学的世界
第2章 都市空間の興奮―荻生徂徠と柳田国男
第3章 江戸の規律=訓練
第4章 境界の民俗学―篤胤と寅吉の江戸
第5章 ユートピアの生成―『八犬伝』と治癒の空間
第6章 「人間」の生成―『八犬伝』と『フランケンシュタイン』
第7章 自己自身からの逸脱
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
9
「荻生徂徠と柳田国男は、いずれも江戸・東京の外部からやってきて、都市空間で発生しているシステムの動揺を思想的=政治的問題領域としてとらえ、都市の興奮を沈静化し、伝統的共同体で存在していた確実なアイデンティティーを再現しようとした」「篤胤の家の日常的な興奮には、知的な側面も存在している。折口信夫は、『仙境異聞』の記述の中にある種の科学的精神を認め、その背後に佐藤信淵の存在を見ている…八年後の文政十一年に寅吉は篤胤のもとを去り、坊主になった。以後彼の消息はまったく不明で平凡な医者になったともいう(渡辺金造)」2017/10/27
わ!
1
タイトルから想像するに、フロイトでも出てくるのかと思って読み始めたのだが、残念ながらフロイトは登場せず、ミシェル・フーコーなどが出てきて、予想外の内容が面白かった。何より一番面白かったのは、何と言っても、荻生徂徠と平田篤胤の対比や、歌川広重と葛飾北斎の対比である。もちろん広重の絵も北斎の絵も観たことはあるが、この本にあるような視点では観たことがなかった。中でも「システムの破壊者としての北斎」以降、終盤の内容はとても面白い。2013/04/28
冬至楼均
0
良く分からない。2015/04/20
tonkototaku
0
持ってるのが1991年の第1刷でたぶん出てすぐ買って読んだのだが・・・ときどき再読。エクリチュールって?まずバルトから勉強かな?2014/09/22
西葛
0
相当面白い。「江戸情緒」なるものは明治時代、欧米文化に覇権を握られアイデンティィを喪失した江戸民たちが「治癒の空間」として想像したバーチャルリアリティに過ぎない。江戸時代はフーコー言の窮屈な監視社会であった事実を忘れ成り立っているのだ。柄谷行人の「風景の発見」は文学上の話として語られたが、筆者はこれを敷衍して都市形成論にまで引き延ばす。2021/05/14