講談社現代新書<br> 万葉の秀歌 〈下〉

講談社現代新書
万葉の秀歌 〈下〉

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  • サイズ 新書判/ページ数 243p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784061457348
  • NDC分類 911.124

出版社内容情報

【内容紹介】
葛飾の真間の手児奈をまことかもわれに寄すとふ真間の手児奈を――東歌 うらうらに照れる春日に雲雀あがり情悲しも独りしおもへば――大伴家持 逞しい生命力と笑いにみちた東歌、望郷の悲しみが胸をうつ防人歌。『古今集』へのかけ橋となった。家持を中心とする末期万葉の優雅な抒情――。宮廷生活から、無名の民衆の息吹きまで、幅広い層の詞華を収めた『万葉集』は、人間味あふれる文学の源泉といえる。本書は、最新の研究成果をとりいれ、秀歌をよりすぐった中西万葉学の精髄である。下巻は巻十一から巻二十まで百十七首を収録。

立山の雪し消らしも延槻の川の渡瀬鐙浸かすも〈大伴家持〉――家持は川に馬を乗り入れてみて、思いのほかの水の豊かさに驚いたのではなかったろうか。ひたひたと鐙をひたす水に足もとの危うささえ感じながら、しかし、それが早くも告げられている春の到来だと知っている。馬の腹までひたす水は身を切るような冷たさであったろうが、凛然とした冷気が気持を引きしめる。私はこの歌を『万葉集』中屈指の秀歌だと思うが、そう感じる理由は、冷気のなかにこもる春の到来というだけにとどまらない。初・二句の山のなかへの想像と三句以下の川の描写によって途中の全風景が手中に収められた、スケールの大きさにもある。もう一つ、家持はこの自然のなかに身体ごとひたっている。体感をとおして自然を知るという万葉ふうな自然観が、ほとんど肉体的な感動をさえ、われわれ読者に与えてくれるのである。――本文より

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

287
上巻には柿本人麻呂をはじめ、額田王や山上憶良など綺羅星のごときスター歌人たちが犇めいていた。下巻は巻11~巻20を収録するが、11,12は作者未詳の歌群、巻14は東歌である。もちろん、それこそが万葉集の特質でもあり、味わいもあるのだが。そして巻17以降は大伴家持の歌が席巻する。名高い「立山の賦」。長歌、反歌ともに熟達の歌だ。短歌一首をあげるなら「うらうらに照れる春日に雲雀あがり情悲しも独しおもへば」か。下巻全体では狭野茅上娘子の歌。「君が行く道のながてを繰り畳ね焼き亡ぼさむ天の火がも」。悲歌に弱いのだ。2017/01/24

kagetrasama-aoi(葵・橘)

22
「万葉集」って本当に素敵な歌集です。原文で読むのはハードル高いですが、先人の研究者の方々が、わかりやすく解説して下さってます。中西進先生のこの「秀歌」は日本人であることの幸せをしみじみ感じさせて下さいます。新春に相応しいお和歌一首。“新しき 年の初の 初春の 今日降る雪の いや重け吉事 大伴宿禰家持” 万葉集の最後を飾る華やかな吉歌です。2020/01/04

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