出版社内容情報
【内容紹介】
人類誕生以来ずっと、ひとは酒とともにかなしみ、よろこび、怒り、笑い、泣いてきた。一杯のビールから、一壜のワインから文化や芸術、政治が動き、歴史は変わっていった。まさに酒はわれわれの最良・最高の友である。いや、もしかすると悪魔の発明品かもしれない。風土や気候によって、世界の国々は特有の自分たちだけの酒を楽しんでいる。飲み方、うまさの秘密、早飲み、大酒飲みコンテスト、酔う酔わないの生理学まで、豊富なサカナを提供し、明日からのイッパイをさらに楽しくするおもしろ酒読本。
「酒はすべて悪徳のもと」――禁酒法が実施される前には、ニューヨークを例にしても、1万5000もの酒場が合法的にあったが、禁酒時代に入るとこれがなんと倍以上の3万2000もの地下もぐり酒場を生むことになる。また、禁酒時代に入るや、ハードリカー(ウィスキーのようなアルコール度の高い酒)が1年間に2億ガロン、ビールのようなソフトリカーになると6億8000万ガロン、ワインも1億1800万ガロン飲まれたと推測され、禁酒法以前に比べ10パーセントも増加している。禁酒法下でいかに酒が飲まれていたかを物語る好例に、摘発された飲酒運転の数があげられる。1920年の禁酒法最初の1年間に比べ、1927年1年間の酔っ払い運転の逮捕者は、実に467パーセントの増加となり、7年間で5倍近くもの逮捕者数となったのである。――本書より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ユウユウ
31
古い本(1982年発行!)だけど、とても面白かった。その題名通り、酒について、その起源、今日の主だった酒、製法、飲み方、飲むとどうなるかまで、大まかに網羅的に、そしてとてもわかりやすく書いてある。まだ吟醸酒が一般には流通していないような時代であることにも驚いた。さすが小泉氏。知識の広さ、深さに感服です。2018/12/05
ふらん
16
シンプルなタイトル。作者は、あの発酵ファンタジスタ(勝手に命名)小泉武夫先生。湖に大量に落ちた果実が発酵して酒になり、それを飲んだキリンが二日酔いになったとか(ほんまかいな)楽しいエピソードに溢れた本。それにしても性的な本を読めば多少でも興奮するのに、酒の本はいくら読んでも酔わないのはなんでだろう。2015/03/20
おおた
14
20年来愛読している小泉先生初期の新書。ロマネ・コンティ1977の値段が出たり西ドイツも存在していて今とはだいぶ酒の常識も異なるが、それでも歴史の話がおもしろい。中でも「奇酒・珍酒」の項では微生物で茸を分解するルチュモール、あの有名なケフィアが実はアルコールだったことを知る。圧巻は中国で、至宝三鞭酒(オットセイ・山狼・鹿の睾丸を高粱酒に漬ける)、羊肉と梨を漬ける羊恙酒(貧血に効くらしい)、鶏糞を焦がして酒に加えると色が変わる「紫酒」など、真偽を疑うような逸品が続々。歴史と科学の酒雑学の詰まった一冊。2016/02/21
NoDurians
3
昭和57年の本だけれど、日本酒の人気や、お酒自体の人気がだいぶん変わっているのだと思う。好きなことを仕事にできるというのはいいなぁ。2013/07/25
やまぐてぃ
3
酒は怖いが面白い。世界各地の酒をその成分や製法にまで踏み込んで紹介する醸造学の本。酒を温めて飲むか冷やして飲むかの違いや、酒合戦のくだりが興味深かった。知識として酒を楽しむことができる。かなり古い本だが、古来より好まれ飲み継がれてきた酒は、ほとんど変化していないだろう。2012/04/10