講談社現代新書<br> ヨーロッパの個人主義 - 人は自由という思想に耐えられるか

講談社現代新書
ヨーロッパの個人主義 - 人は自由という思想に耐えられるか

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  • サイズ 新書判/ページ数 223p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784061155763
  • NDC分類 304
  • Cコード C0230

出版社内容情報

【内容紹介】
現代の社会に、進歩に、個人のあり方に、深奥からの疑いを発せよ。そして、己のうちなる弱さと、ぬきさしならぬ多くの困難を直視せよ。すべての真実は、幻想にみちた虚像を超えるところに始まる――。本書は個人主義の解説書でもなければ、ヨーロッパ論でもない。欺瞞にみちた「現代の神話」に鋭くつきつける著者の懐疑の書である。しかも懐疑をして脆弱な知性のとまどいや、絶望に終わらせない、切実な行動への書である。

読者に問う――人は自由という思想に耐えられるか――私のこのささやかにして、かつ本質的な懐疑は、いうまでもな、美しいことばで自由をはなばなしく歌い上げるわが日本の精神風土への抵抗のしるしであり、身をもってした批判の声である。それを読者がどう受けとめ、どう理解し、どのように自分の生き方のなかに反映させるかは、すでに読者の問題であろう。が、この一片の書は、解説でもなければ、啓蒙でもなく、このささやかな本のなかに、私の日常の生き方、感じ方、考え方と関わりのないことは、ただの1行も書かれていないことだけは確認しておこう。なぜなら、文明や社会の立場から人間を考えるのではなく、人間の立場から文明や社会を考えたいということが、私のいいたいことの基本的考え方のすべてをつくしているからである。――本書より

書評より――梅原猛(本書より)
ここで西尾氏は、何よりも空想的な理念で動かされている日本社会の危険の警告者として登場する。病的にふくれ上がった美しい理念の幻想が、今や日本に大きな危険を与えようとする。西尾氏の複眼は、こうした幻想から自由になることを命じる。自己について、他人について、社会について、世界について、疑え。そして懐疑が、何よりも現代の良心なのだ。西尾氏は、戦後の日本を支配した多くの思想家とちがって、何げない言葉でつつましやかに新しい真理を語ることを好むようである。どうやらわれわれは、ここに1人の新しい思想家の登場を見ることができたようである。――潮・1969年4月号所収

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

著者の生き様を学ぶ庵さん

37
西洋思想を表層的に取り込んだ明治維新後の日本の近代化は薄っぺらいと思われていることを知ったのは、本書を読んだ高二の時。進歩とニヒリズム、個人と社会、自由と秩序の3部からなる本書を読み、筆者のニヒリスト振りが伝わる。漱石先生が仰ったか知らないが、近代日本の文明開化は本質的に皮相上滑りなら、本物の近代化は日本では経験出来ず、日本人が海外で生活しても本質の会得は無理。近代化の限界をどう補うかを知りたかった高二の頃。筆者の極端な言動が顕在化し、素直に本書を読めない今。予備知識が心の目を曇らせるのは良くないなあ。2016/11/06

pino

4
良本。自分の甘っちょろさがよくわかった。個人主義というのは結局のところ、エゴイズムからきている。他者だってエゴイズムを持っていて、それにより自分が脅かされかねない。だから法なり秩序なり道徳なりで線引きをし、その中で最大限互いの自由を保障しあおうよ、ということ。日本にも明治維新後、個人主義の価値観がどっと入ってきたわけだけど、国や民族の凄まじい衝突を何度も経て醸成されてきたヨーロッパの個人主義が日本にそのまま馴染むはずがない。そもそも個人主義の思想が成立するには言論で対立を解消できる必要がある。→2020/12/12

ダイキ

3
西洋の孤独、日本の浮遊。「十億の民の飢えなどはどうにも解決できないという断念から出発しなければ物事はなにひとつはじまらないのである。ところが、知識人や学生や芸術家の一部の者がなぜこういう途方もない問いを、自分では何もできないのに、たえず掲げていなければならないのかといえば、まず第一に、現実の困難にぶつかっていない。第二に、それにもかかわらず、「自分は良いことをしている」という自分自身の正当証明をしたい。ことばをかえれば宣伝である。」〈進歩とニヒリズム〉2017/06/01

MIRACLE

0
ヨーロッパの代表的な思想や理念について、その実相の紹介をとおして、日本人に反省を促した本。警句は貴重だが、その実態はヨーロッパの個人主義についての私的な「所感」である。本書の致命的な欠陥は、西欧における「個人」「自由」「平等」などのあり方について、歴史的な形成過程の把握ではなく、筆者の滞欧経験にもとづいて論じていることだ。そのため、本書の議論は、印象論にすぎず、普遍性を欠く。また、議論も非論理的で、空疎な言葉が連なる。したがって、本書からヨーロッパの個人主義について納得いく説明をえることは困難である。2015/08/04

うたまる

0
「善かれ悪しかれ、われわれの精神空間には、人間同士はけっして理解しあえないものだという深い断絶の確認をくぐり抜けていない弱さがあるように思える。人間理解といえば、むろんわれわれは全ての人間を理解する建前をとることができる。全ての人間を口では愛してると言うこともできる。だが、『隣人を愛せよ』という戒律が絶対性をそなえて迫ってくるのは、愛の不能と絶望を思い知らされている世界にしてはじめて起こりうる逆理なのだということを、どれだけわれわれは自覚しているだろうか?」

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