内容説明
もしあなたが世界からこぼれ落ちても、私が両手をのばして、受け止めよう―『博士の愛した数式』『ミーナの行進』の小川洋子が世界の片隅に灯りをともす、珠玉のナイン・ストーリーズ。
著者等紹介
小川洋子[オガワヨウコ]
1962年、岡山県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。88年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞、91年「妊娠カレンダー」で芥川賞を受賞。2003年『博士の愛した数式』がベストセラーとなり、04年、同書で読売文学賞、本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花賞、06年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Ikutan
79
読友さんの感想を読んで、好みの作品だろうなぁという予感的中。何処かほの暗く、歪で、その世界に踏み入れたらもう目が離せない九つの短編。野球少年と曲芸師。人体楽団と涙を売る女。エレベーターと一体化する少年。独りでチェスをするシッター。終わらない野球の試合...ああ、この独特な世界は小川さんだとどっぷり浸かる。印象的だったのは、次々お祝いの品が届く『教授宅の留守番』。ラストが衝撃。発想を転換した『お探しの物件』では、不気味な物件情報にのまれそうになる。まさに夜明けの縁をさ迷う人々ですね。珠玉の小川ワールド堪能。2022/05/13
けんとまん1007
73
あっ、そう来たのか・・・。一言でいうと、そうなる。確かに、夜明け前のある一瞬は、独特の時間だと思っている。1日が切り替わる瞬間でありながら、何か、間があるようにも思う。そんな間に迷い込んだら、こうなってしまうのかなあ~。人間の奥底にあるダークで哀しい部分が滲み出ている。2022/07/18
chimako
73
書名が表すとおり、さ迷う人々の物語。そして、この一冊は匂い(臭いが似合いか)がする。例えば部屋を埋め尽くす花や食べ物。そこから微かに漂う死臭。半死半生のカラス。謎の生き物「サンバカツギ」。ミックスジュース。懐かしいパラソルチョコレート。カレーライス……その匂いの中で正気を逸して自分自身の縁をあちらへこちらへと行き来する人、幻を見続ける人、場所に捕らわれてでたとたんに消えてしまう人。怖くて痛ましくて少し切なく愚かしい。最初と最後が野球のお話。それとパラソルチョコレートが好きだった。2015/02/28
J D
53
あー!満足。小川洋子さんに脱帽です。短編集でいずれの作品も個性があって楽しめた。「涙うり」悲しいお話。この切り売りする感覚小川ワールドだなと思う。唯一ほっこりした「パラソルチョコレート」は、手放しで好きだな。「教授宅の留守番」は、苦手な部類。奥が深い短編集でした。2022/06/26
カピバラ
53
この手の不思議素敵系なお話を描かせたら、小川洋子の右に出る者はいないと思う。どの話も不思議で、お洒落でたまらない短編集でした。2016/06/05