内容説明
江戸時代の絵画では、代筆や共同制作は当たりまえのことで、「似せ物」は「ニセモノ」ではなかった…。こうした制作事情をはじめ、画材、表装、落款、画賛など「もの」としての絵の要素と、掛幅・絵巻・屏風・襖絵などの画面の「かたち」の情報とから、作品の真贋、来歴、制作意図などを、謎解きさながらに解明。日本絵画の面白さを語って定評ある著者による、絵を愉しむための初めての手引き書。
目次
作品を「見る」
作品とは?
模倣と似せ物
贋作をめぐって
作品という「もの」
「もの」は嘘をつかない
画面をつくる
断簡と復原
落款印章あれこれ
画賛・識語・奥書
付属品も見てみよう
粉本のこと
著者等紹介
榊原悟[サカキバラサトル]
1948年、愛知県西尾市生まれ。早稲田大学大学院文学研究科修了。専門は日本美術史。サントリー美術館主席学芸員を経て、現在は群馬県立女子大学教授。文学博士。著書に『美の架け橋―異国に遣わされた屏風たち』(ぺりかん社 芸術選奨文部科学大臣賞)などがある
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感想・レビュー
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Wataru Hoshii
1
「日本絵画の見方」と題しながらも、あえて画面そのものの話はあまりしないところが面白い。画面形式と表現内容の関係、紙継ぎのルール、箔の大きさ、落款印章の見極め方、画賛や識語の内容、表装などなど、美術作品を「もの」や「かたち」としてとらえることの大切さが語られている。その基礎にあるのが、日本絵画は通常「美術」という言葉でイメージされるものとはだいぶ違っている、という基本的な認識。一般的な日本美術入門書とはだいぶ違うユニークな視点によりながらも、日本絵画を見るときに非常に参考になるポイントが詰まっている本。2013/03/24
chang_ume
0
絵画の「もの」としての制作過程。料紙の不整合から原型推定は面白かった。ただ、表現手法そのものについても解説が欲しかったなあ。無い物ねだりですが。審美を知りたい。2015/10/19
なをみん
0
一見関係なさげな糞尿話全開で始まったので予感はしたけど面白かった!日本画に興味関心の無い本好きさんでも十分に楽しめるのではないのでしょうか。もちろん日本絵画を観るのがもっとの楽しくなる実用的な話が満載。作品をまず「もの」としての一面に注目という視点は日本絵画以外のアートにも必要かもだけど読んだことなかったかも。もっと広く評価されて良い本だと思う。著者の別の本も読んでみたくなったけど紙の本だけど。須坂の豪商田中本家の話もでてきて親近感もアリです。2023/07/03