内容説明
幕末の暮らしを忍藩の下級武士が描いた『石城日記』。家族や友人、寺の和尚や料亭の女将たちと仲睦まじく交わり、書を読んで歌を唄い、食や酒を大いに楽しむ。家族団樂、褌一丁での読書、素人歌舞伎などの描写は、飄々とした作者の人柄がにじみ出ており、思わず吹き出すような滑稽味にも溢れている。封建的で厳格な武士社会のイメージを覆し、貧しくも心豊かな人生を謳歌した下級武士たちの、真の日常生活がわかる貴重な記録。
目次
1 石城の七日間
2 石城たちが暮らした城下町
3 自宅の風景
4 下級武士の友人宅の風景
5 中級武士の友人宅の風景
6 中下級武士の住まい
7 寺の風景
8 酒店と料亭の風景
9 世相と時代
10 ふたたび自宅の風景
著者等紹介
大岡敏昭[オオオカトシアキ]
1944年、神戸市生まれ。熊本県立大学名誉教授。九州大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士。「歴史は現在の問題から遡るべき」という理念のもとに、古代から現代までの日本住宅と中国住宅、およびその暮らしの風景を研究している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
126
幕末の下級武士の暮らしを記した「石城日記」。「石城日記」は絵日記であり、当時の暮らしを視覚でも楽しめる。また本作品の作者の大岡敏昭さんの解説で読みやすい。これは良作。藩政に意見し家禄を大幅に削られた石城。だが、妹の婚家で暮らし様々な人々と交流し暮らす姿に過度な悲壮感はない。勿論、金銭的な余裕は欠けるが身分によらず楽しく酒を飲み、協力して毎日を過ごす。濃密な人間関係がある。現代では薄れた利他の心が息づいている。まさに「和」の日常があると言えよう。更には各藩の拝領屋敷も図面で解説。知的好奇心を刺激する良作。2020/10/15
さばずし2487398
33
これ程純粋に実際の武士の生活を、しかも絵付で残している物は貴重。幕末忍城下に下級武士として生きた石城氏の日常の記録。元々プロ並の絵の腕前の彼が描いた人物は、みな観音様のような優しい顔で愛おしい。食べ物、家具の配置なども細かい。身分に関係なく町人や僧とも語り合い、コミュニティを大切に助け合っていたのが驚き。僧の生ぐさ具合も凄いし石城も藩にお咎めされる程日々へべれけ(笑)一方で読書は怠らず教養は高い。激動期、こうした名もない武士の慎ましくささやかな生活が時代を動かす力と呼応したのだという著者の言葉に感動。2021/10/30
ベルるるる
19
こんなに面白い絵日記を残した武士がいたのにびっくり。 この本では、絵は白黒で紹介されているけど、本物は彩色されているそう。見てみたいな~。2015/11/30
ゆずぽん
19
お気に入りさんの感想を読んで手にした本。忍藩の下級武士、石城が描いた絵日記。武士とはいえ下級ともなれば暮らしも貧しく、そんななかでも楽しく暮らして居る様が良くわかります。それは、ほのぼのとした絵が一役も二役も買って出ていますね。人の絆と心の豊かさが溢れた一冊でした。面白かった~2015/08/04
booklight
10
そうか、江戸時代の武士にも、絵を描かずにいられない質の人がいたんだなぁ、と気づく。 閑職の下級武士の日常が、じつにだらしなくてよい。人付き合いも広く、人徳のなせる業か。2017/12/12