内容説明
「脳死」は本当に「人の死」なのだろうか。臓器移植は本当に人間に幸福をもたらすのだろうか。そして、かけがえのない「いのち」とは何か。一九九〇年代以降、「日本人の死」は急激な変化をとげてきた。医師による安楽死事件、尊厳死事件、臓器移植の提供者と患者、移植を拒否し、告知された余命を超えて生きつづける少女…。それぞれの現場から、私たちの「死」について語り「生」を考える、「いのち」のドキュメンタリー。
目次
第1話 安楽死事件
第2話 尊厳死事件
第3話 祈りの家族
第4話 ある少女の生と死
第5話 死、その先にあるもの
著者等紹介
高山文彦[タカヤマフミヒコ]
1958年、宮崎県生まれ。法政大学文学部中退。95年、98年に「雑誌ジャーナリズム賞・作品賞」を受賞。『火花』で第三十一回大宅壮一ノンフィクション賞、第二十二回講談社ノンフィクション賞を受賞する
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感想・レビュー
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James Hayashi
26
東海大医学部安楽死事件、益子の尊厳死事件、臓器移植へはやる医師など、ドキュメンタリーに人間の死とそれをコーディネートした医師を探る。臓器移植の是非をとうてはいない。現代医療に孕む問題点をあげている感じ。東海大の件は、医師が大学から生贄にされた様な印象。患者の家族も非人間的。2020/12/23
うたまる
2
なんとも重い本。”いのち”という大きく広いテーマなため、各章が繋がっているようでいてバラバラにも見えるのが残念。1章はモンスター的な患者家族による強制された安楽死、2章は尊厳死を巡る内と外の軋轢、3章は臓器移植にまつわる医師の暴走、4章と5章は自己の死を見つめる患者と歌手、どれも単独で書籍化すべきほどの密度を有している。各章の其処此処にある終末医療(サイエンス)と死生観(ヒューマニズム)の対立、そして立場の弱きところに発露する矛盾の数々……「フィリピンはまるで臓器植民地だよ」(死、そのさきにあるもの)2014/10/21
ラブミーテンダー
1
臓器移植に関してのノンフィクション。1章は臓器移植に直接関係ないが、医者という仕事に関して考えさせられる。しかし、これは患者の家族が余りにひどい。また3章の臓器移植コーディネータの部分で、遺族の扱い悪いのが大阪であるのが悲しい。結論は出るはずもない話。iPS細胞による治療が完成すれば消える問題でもある。2013/08/13