内容説明
侵掠したフランス軍壊滅の奇策、「読む者を狂気へ導く玄妙驚異の書物」は今まさにカイロの片隅で、作られんとしている。三夜をかけて譚られた「ゾハルの地下宮殿の物語」が幕を閉じ、二人めの主人公がようよう登場する頃、ナポレオンは既にナイルを遡上し始めていた。一刻も早く『災厄の書』を完成させ、敵将に献上せねばならない。一夜、また一夜と、年代記が譚られる。「ひとりの少年が森を去る―」。圧巻の物語、第二部。
著者等紹介
古川日出男[フルカワヒデオ]
1966年福島県生まれ。98年『13』でデビュー。01年『アラビアの夜の種族』(第55回日本推理作家協会賞及び第23回日本SF大賞受賞)。05年『ベルカ、吠えないのか?』(第133回直木賞候補)『ロックンロール七部作』『LOVE』(第19回三島由紀夫賞受賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
356
外枠の物語では、いよいよナポレオン軍3万がエジプトに上陸。迎え撃つはムラード・ベイを総帥とするマムルーク軍団。初戦は綺羅を誇るエジプト軍は近代的な軍隊の(ということはエジプト側からは貧相な)ナポレオン軍の前に追走するしかなかった。一方、物語内では第2の主人公ファラー、そして第3の主人公サフィアーンの物語が語られる。その語りは、第1巻よりは遥かに「物語」としての文体と結構を持っている。もっとも、第2巻のクライマックスともいうべきファラーとサフィアーンの邂逅のくだりでの互いの会話文は残念ながら通俗の極みだが。2018/10/25
優希
46
恐ろしい熱量を感じました。『災いの書』を完成させるべく語られる一夜また一夜。その物語にのめり込む自分。怖さすら感じる世界。最終巻はどのような世界へと引き継がれるのでしょう。2024/04/09
hit4papa
36
ナポレオン・ボナパルトが侵攻が着々と進むエジプト。「災厄の書」は魔導士アーダムの物語から千年の時を経て、二人のみなしごファラーからサフィアーンの物語へと語りつがれます。数奇な生い立ちでありながら比類なき魔法を剣術を手にした二人、アーダムとの邂逅と盛り上がり所ですが、ちょっと中だるみ感が否めません。展開が読めないからでしょうか。第1巻に引き続き、美麗は日本語に圧倒されることしきりですが、何故か会話文がおちゃらけ気味で興を削ぎます。アイユーブは書物を完成させてエジプトを救うことができるのか。第3巻に続きます。2017/05/21
ひなきち
30
…これは創作?本物のアラビアンナイト?実際に読んでいても、空想と現実の間でまどろんでいるような…夢をみているような…不思議な気持ちがします。語り部の紡ぐお話は、怖い部分もあるけれど、ときおりギャグもあって、全く飽きません(好きですね~!(笑))。もう少し夜の帳のなかに…。まだ夜明けを迎えるのは早すぎるのです。2019/01/31
K・M
25
Ⅰ部の主役魔王アーダムが自らが建設した長大な地下迷宮と共に永き眠りにつく頃、物語の外の世界ではナポレオン率いる武装船団がアレクサンドリアに上陸し遂にエジプト軍と戦火を交える。首都カイロ到達前にアイユーブの切り札『災厄の書』は完成するのか‥!?白き魔法使いファラーと鬼神(イフリート)擁するサフィアーンの2人が新たに登場、長い序章が終わり目まぐるしく物語が動き始める。ズームルッドが語る登場人物たちの口調がなぜか妙に薄っぺらい。Ⅱ部終盤からは千夜一夜物語というより魔法と剣のファンタジーの一色か。Ⅲ部へと続く。2022/07/21