内容説明
人間から逆進化してゆく恋人、戦争で唇を失いキスができない夫、父親が死んだ日に客たちとセックスする図書館員、火の手と氷の手をもつふたりの少女…想像と言葉の魔法を駆使して紡がれる、かつてない物語。不可解なのに現実的、暗く明るく、哀しくて愛おしい。そこから放たれる奇跡的な煌めきに、私たちはいつしか呑み込まれ、圧倒され、胸をつかまれる―。各国で絶賛された傑作短編集、待望の文庫化。
著者等紹介
ベンダー,エイミー[ベンダー,エイミー][Bender,Aimee]
1969年、生まれる。カリフォルニア大学アーヴァイン校創作科出身。小学校教諭をつとめた後、「Granta」「GQ」「The American Review」などの雑誌にショート・ストーリーを発表。最初の短篇集である本書は刊行後ただちに書評家たちの絶賛を受け、98年のニューヨーク・タイムズ紙の注目の一冊に選ばれる。2000年に初の長篇『私自身の見えない徴』(角川書店)を発表。ロス・アンジェルス・タイムズ紙の注目の一冊に選ばれるとともに、ベストセラーリストにも登場、確実にファンを広げる。現在は南カリフォルニア大学で教えながら精力的に執筆を続けている。ロス・アンジェルス在住
管啓次郎[スガケイジロウ]
1958年生まれ。明治大学理工学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
170
どんなことばを尽くしても、唇をふさぐ等価がないならそこに求める愛はないの。あなたを顕微鏡で覗く日々に私のしあわせは存在しない。行きずりでいい、夢中でからだをしゃぶって崇めて。あまいお菓子で指先まで満たして。汗にまみれたベッドではきっと今朝見た死も忘れるだろう。夜がネオンに照らされるから闇はここまではこない。何も考えないあなたのかわいい”子猫ちゃん”でいさせて。2019/12/10
(C17H26O4)
68
原題 “The Girl in the Flammable Skirt” 何度めかの再読。今回は原書と併読。2020/01/16
うりぼう
64
松丸本舗で購入。多分今年のベスト10に入ると思う。1話目を読んでいて、「ベンジャミン・バトン・・・」か?と思っていたら、全く違っていた。SFでもファンタジーでもスリラーでもなく、独特の感性。発想は、自由奔放でありながら、泣きそうになり、どこまでも心の奥底に染み入ってくる。「マジパン」の父の穴、生まれる祖母、最後に動けない娘、この宙ぶらりん感がたまらない。薄もやの向こうに何かがあると確信しながら掴めないもどかしさ。そして、短編が進むに連れて加速感を増し「ポーランド語で夢を語る」でピークに達し、ふと着地する。2011/01/17
まつこ
54
1冊をまとめて言えば幻想的な雰囲気ですが、短編集なので各々現実と幻想のバランスが違いました。リアルな話もあれば、精神疾患?とまで思うような記述もあったりしてなかなか濃かったです。散文詩っぽいものもあったりしましたが、私としては成り行きがわかる話の方が好みです。特に『どうかおしずかに』『酔っぱらいのミミ』『癒す人』『無くした人』など。寂しさと性が表裏一体で、ちょっと泣けました。2015/09/29
藤月はな(灯れ松明の火)
51
針で指を刺してしまったような微かな痛みと閉じた世界に満足しているような登場人物たちに突き放されたのになぜか優しいと感じるような描写が秀逸でした。ありえなさそうでありえそうな物語を真昼の星々で浮遊飛行しているような気分で読んでいました。2011/09/06