角川文庫<br> サランボオ 〈下巻〉 (4版)

角川文庫
サランボオ 〈下巻〉 (4版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 205p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784042014034
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

NAO

64
ナラヴァスの寝返りは、恋敵マトオへの対抗だったのだろうが、彼の思惑通り(?)サランボオの父親は勝利の暁に娘と結婚させてやると約束、傭兵たちの形勢は一気に悪くなる。最初から、ナラヴァスは嫌な感じだったもんなあ。マトオの狂おしい気持ちはひしひしと伝わって来るのに、サランボオの気持ちが、どうにもよく分からなかった。彼女は、本当にマトオが好きだったのか、マトオの熱情に一時的に感化されただけだったのか。そういったことを考えると、「タニットのマントに触れたため死んでしまった」というのは正しい表現なのかもしれない。2018/04/27

syaori

45
役者も状況もそろった下巻はあっという間。そして大変血生臭い。生贄に捧げられる子供たち、血と死体があふれる戦場、そのなかでは誰も、アルミカアルさえも英雄のようには描かれないのですが、しかしそれは残酷な場面を描いた美しい絵のように差し出されていてため息が出るほど。サランボオとマトオ、ナラヴァスが作り出す三角形もその道具になってしまっているように感じられるのは残念だったのですが、サランボオのたてる衣擦れや香料、戦場の血の匂いが本から立ちのぼってくるようで、古代カルタゴの空気を吸い込むような夢中な読書でした。2017/08/22

かんやん

11
高は括れぬものだ、と。血湧き肉躍る古代ロマンなどではなく、尋常でない小説だった。象に踏み潰される人々、十字架、兵糧攻め、カルタゴの生贄の儀式…何人死んでるのか?ひたすら血塗れで残酷だが、恐らく作者は楽しんでいる(「さぞかしボードレールも満足だろう」)。腕によりをかけた、残酷さのための残酷さ。日常に退屈して?卑近な現実に飽き飽きして?血みどろの古代をうっとりと夢見ているようなところがないか。類い希な言語表現の達成であるけれども、どこか空虚なのはそのせいかな、と。読み進めるのがつらかった。2017/07/16

madhatter

3
再読。一方、軸となるマトーとサランボオの関係も興味深い。鹿島茂氏は彼女を「鈍いファムファタル」とする。確かに二人の関係は、彼の直情径行さと彼女の鈍さの歩調が合わず、それが悲劇の一因ではあろう。また、彼女が彼を愛したかも些か疑問。個人的にはマトーによる「刷り込み」に近いと思う。但し、ザインフ奪還後の彼女は尋常ではない。マトーの死を引き寄せるために、ナラヴァスを利用する手管は、無意識であっても、愛の効用を彼女が知っていることを示している。彼女はむしろ、典型的なファムファタルなのでは。2011/04/16

アル

1
カバー見返しの紹介にはまるで恋愛小説のような事が書かれていたが、実際はそんな内容ではない。 主人公サランボオは、父アミルカアルを含めた男たちから色々なものの象徴のように見なされるが、彼女自身はそうした男たちの影響を受けつつも、何か別の衝動に突き動かされているように見える。 蛮族と呼ばれる傭兵たちのみならず、カルタゴ人も含めた古代人達の野蛮さ、残虐さが印象的。2014/10/16

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