出版社内容情報
人型のはりぼてに神様にとられたくない物をめいめいが工作して入れるという奇祭の風習がある町に生まれ育ったシゲル。祭嫌いの彼が、誰かのために祈る――。不器用な私たちのまっすぐな祈りの物語。
内容説明
神様に「これだけは取られたくない」ものを工作して申告し祈りを捧げるという、奇妙な祭りがある町に育った不器用な高校生シゲル。父親は不倫中、弟は不登校、母親との関係もうまくいかない閉塞した日常のなか、町の一大イベントであるお祭りにも、どうにも乗り気になれないのだが―。大切なだれかのために心を込めて祈るということは、こんなにも愛おしい。地球の裏側に思いを馳せる「バイアブランカの地層と少女」を併録。
著者等紹介
津村記久子[ツムラキクコ]
1978年大阪府生まれ。大谷大学文学部卒業。2005年『君は永遠にそいつらより若い』(「マンイーター」を改題)で第21回太宰治賞を受賞し、小説家デビュー。2008年度咲くやこの花賞文芸その他部門(小説)受賞。主な著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』(第30回野間文芸新人賞受賞作)、『ポトスライムの舟』(第140回芥川賞受賞作)、『ワーカーズ・ダイジェスト』(第28回織田作之助賞受賞作)など。「給水塔と亀」で第39回川端康成文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
180
津村さんらしい?ユル〜くホワッとした作品でした。特にインパクトのある展開でもなく、目立つような登場人物もあまりいないのですが、不思議と先が気になり、頁をめくる手が止まらなくなります。表題作は'サイガサマ'というちょっとした神様を奉る不思議な風習の話で、特にどうということはないのですが、そのユルさがやっぱり津村さんワールドの真骨頂なんでしょうね。フツーの人々がフツーに生活している様子をどこかコミカルに綴る津村さん、やっぱり読んでて癒されます。ハッピーかどうかはともかく、不思議さがストレスなく読めました。2018/02/24
抹茶モナカ
140
『祈り』がテーマの短編小説2篇収録。津村記久子さんの小説を読んでいると、RADIOHEADが聴きたくなって、BGMにしながら読んだ。不器用な青年が主人公なところに感化され、自分の若かった頃を思い出させられた。東日本大震災後の小説でもあり、祈りについての小説でもあり、少し打ちのめされた。西加奈子さんの『サラバ』に出て来る神様って、サイガサマのパクリなのだろうか。2017/05/10
のんき
97
二つの祈りのお話しでした。わたしも、家族のこととか、友だちや好きな人のことを祈ってるかなあ。神さまとかいるかどうかはわからないし、叶うかどうかもわかりません。でも、やっぱり祈っちゃうな!それから、なんか久しぶりに地球の裏側の国のこと考えました。何語を話してるのか?日本と同じで、地震とか多いのかなあ?とか、世界は広いし、いろんな人が住んでるんだな、とか。南米に限らず、日本とは違う国の知り合いができたらいいなって思いました。2018/06/17
R
94
形容しがたい現代小説で、様々な悩みについて書かれていたと思うんだが、基本設定にある町の祭について、まったくしっくり来ないのに、なんかそういう祭に自分も参加したことがあるような気分になって読み終えてしまいました。面白いんだが、納得とは違う、まったく踏み入れたことのない状況の物語なのに、どっか親近感めいたものを覚えて、神様に祈る、いや、そもそも神様の力や設定や定義が違うしといったところが、コミカルだけど、なんか信じたくなるような、実に不思議な読書となりました。2018/04/16
なゆ
94
誰かのためを想って強く強く祈るとき、その祈りが届き願いが叶うことは、じつは意外にあるのかもしれない…そんな風に思わせてくれる。たとえ何かを失ったとしても人は祈り続けるし、たとえ地球の裏側に向けてでもひたすらに祈る。「サイガサマのウィッカーマン」サイガサマというどこか妙な神様を信じる町の人たちとそのお祭り、それを冷めた目で見る高校生シゲルの苛立ち。少々不思議なスパイスもありつつ。「バイアブランカの地層と少女」京都嵐山の学生ガイド作朗と、アルゼンチンの少女フアナのささやかな交流。どんだけ心配症なんだ、作朗。2013/07/13