出版社内容情報
なぜ「あの男」を殺めることになったのか。老齢の水戸光圀は己の生涯を書き綴る。「試練」に耐えた幼少期、血気盛んな”傾寄者”だった青年期を経て、光圀の中に学問や詩歌への情熱の灯がともり――。
内容説明
「なぜあの男を自らの手で殺めることになったのか」老齢の光圀は、水戸・西山荘の書斎でその経緯と己の生涯を綴り始める。父・頼房の過酷な“試練”と対峙し、優れた兄・頼重を差し置いて世継ぎに選ばれたことに悩む幼少期。血気盛んな“傾奇者”として暴れる中で、宮本武蔵と邂逅する青年期。やがて文事の魅力に取り憑かれた光圀は、学を競う朋友を得て、詩の天下を目指す―。誰も見たことのない“水戸黄門”伝、開幕。
著者等紹介
冲方丁[ウブカタトウ]
1977年岐阜県生まれ。96年、『黒い季節』で第1回スニーカー大賞金賞を受賞してデビュー。2003年、『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞受賞。09年刊行の『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、2011大学読書人大賞、第7回北東文芸賞、第4回舟橋聖一文学賞を受賞。12年、『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
明智紫苑
147
確かに伯夷兄弟の故事は光圀を語るに欠かせないが、趙襄子についての言及が一切ないのがもどかしい(光圀の立場はまさしく趙襄子に似ている)。関係ないが、私の母の葬式を手がけてくださった葬儀屋の社長さんが水戸徳川家の子孫だった…北海道に徳川家の人がいるのは、何だか不思議。2016/08/16
佐々陽太朗(K.Tsubota)
135
前段、子龍(光圀)が兄・竹丸(頼重)を思う気持ちに心振るわせ、竹丸が子龍を思う気持ちに心打たれ、二人が別れる場面に涙した。中段、光圀と林読耕斎との友情の芽生えを喜んだ。後段、泰姫の登場に雀躍した。泰姫の清潔な正直さ、誠実さは光圀の心のオアシスになるに違いない。欺瞞の泥にまみれながらも、一片の清潔を守り通す白蓮のごとき誠意とは斯くも可憐なものか。可憐でありかつ高潔な白蓮のごとき泰姫に膝枕をしてもらう光圀、うらやましいぞっ! 下巻には泰姫を存分に登場させていただきたい。冲方どの、そのあたりよろしく。 2016/10/13
mariya926
126
え??光圀って水戸黄門だったの??って疑問を覚える程、面白かったです。まったく若い時キャラと、私がイメージしている水戸黄門キャラが違っていて面白いです。ただ幼少の時の父の厳しさや、兄ではなく自分が選ばれた葛藤などが文学に向かったのですね。そしてモテモテであった光圀を一気に虜にしてしまう姫の素直さが微笑ましかったです。続きも読みます。2023/03/16
hnzwd
123
天地明察でも、その個性を発揮した水戸光圀。その生涯を若年期から辿ることで、名前は知ってるけれど全く意識したことの無かった歴史を感じられます。抱える苦悩など知らない事ばかりで、自分の不勉強を痛感させられるのですが、、そんなの関係なく、手放しで面白いと言える時代小説。下巻も一気に読みます。2016/02/22
とん大西
103
助さん格さんと諸国を漫遊し、悪人を懲らしめる闊達な爺ちゃまは出てきません。出てくるのは自らの生い立ちに悩み、義を求め日々研鑽する水戸の御曹司・徳川光圀。求道者であり詩人でもあり、雅で粋で傾奇者。ストイックなさまが書生の青臭さを感じさせますが、なかなかどうして…。幕政は武断から文治へ。戦の時代は遠い過去となり、世はまさに泰平への転換期。文武に秀で鋼のような一本スジの入った男が悩み、友と交わり、学に励む青春。始めがちぃと読み辛いけど、中盤以降、躍動する光圀が魅力的です(^_^)。面白くなってきました。下巻へ。2018/05/29