出版社内容情報
格差社会に翻弄される恋人たちを描いた、現代版ロミオとジュリエット!
純粋な愛をはぐくむ二人に、現実という障壁が冷酷に立ちふさがる――すぐそばにあるリアルな恋愛を、格差社会とからめ、名手ならではの味つけで描いた恋愛小説の新たなスタンダードの誕生!
内容説明
恵まれた環境に育ちながら、夢も希望も目標もない日々を送っていた20歳の澄雄。しかしある日携帯の出会い系サイトでジュリアとめぐりあい、彼の人生は一変してしまう。言葉をしらない獣のようにつながりあい、愛しあう二人だったが、六本木ヒルズに住む学生とパン工場で働く契約社員では、あまりにも住む世界が違いすぎた。格差社会に引き裂かれ、それでも命がけて恋を全うしようとする恋人たちを描く。
著者等紹介
石田衣良[イシダイラ]
1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEENフォーティーン』で直木賞、06年、『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
96
あまりに悲しすぎる結末の作品でした。冒頭から衝撃を受け、まんまラストに繋がるというのが苦しい。出会い系サイトで出会った澄雄とジュリア。依存しているかのような2人の関係は恋愛だったのかとふと考えずにはいられませんでした。あまりにも違う世界に住む2人だからこそ、その世界から逃げ合うように惹かれたのでしょうか。耐え難い状況が続くのに、美しさを感じてしまうのが不思議でした。格差社会が生んだ悲劇の恋。ああするしか道はなかったのかと思うと胸が痛みます。2016/04/28
さっとん
53
冒頭で悲しい結末になることが示されていて、そこに至るまでが描かれていて、全体的に辛く重たい内容なのですが、びっくりするぐらいサクッと読めました。 良く言えばテンポがいいし、悪く言えばちょっと軽い感じ。 時代背景も含めてもう少し若い頃に読みたかったかな。 感情移入したり引き込まれる感じではありませんがフィクションの物語を楽しむという意味では充分楽しめる作品でした。2020/06/20
ひめか*
38
澄雄とジュリア…ロミオとジュリエットなような格差恋愛の話。暗くて悲しくて切ない物語のはずなのに、恋愛のカタチがすごく現れていて美しかった。ジュリアの身にこれでもかと悲惨な出来事が重ねて起きていくのを見ているのが辛かった。私も父親に怒りたくなった。でも一緒にいたい、それが止められない恋なのだ。私も本当に好きなら一緒にいることを選ぶだろう。さすがに心中はしないけど。これは幸せな選択なのか。もっと何か方法があったのではないかと思ってしまう。こういう作品は以前は苦手だったが今は大人になったのかな、面白いと思える。2016/12/28
いずむ
38
石田さんだからこそ。この悲しみの結末に、どんな言葉で折り合いをつければいいのだろう。出会ってしまったから、この世界が始まっていて、光があることを知って。恋をしてしまったから、闇のなかにいることを知って、2人で世界を終わらせるしかなくて。”THE ONLY WAY IS UP.”そう言って力強く上を向かせてくれるペンで、ひたすらに力強く、終わりに向かう2人が描かれる。オトナが語る正論。それは現実。だけど、2人の手に結ばれた赤い糸。それが真実。「生きてこそ」なんて言葉で片付けないで。今は2人の幸せを祈らせて。2013/02/13
なつ
29
衝撃の冒頭(そのまんま結末。)から始まる物語。若い二人が選ぶ結末はわかっているのに、それでも惹き付けられるように一気読み。耐え難い事が連続して続くのに、綴られる文章は何故か綺麗で。でも哀しい。他に方法はなかったのだろうかと思う。2016/03/07