内容説明
コソボの人々の新しい生活がはじまろうとしている。戦争終結からまもなく5年。破壊から再生への道をたどりつつあるコソボで、つつましくも力いっぱいに生きる家族のしあわせのかたちを追う。小学校中級から。
著者等紹介
長倉洋海[ナガクラヒロミ]
1952年北海道釧路市生まれ。写真家。1980年よりアフリカ、中東、中南米、東南アジアなど世界の紛争地を訪れ、そこに生きる人々を見つめてきた。写真集に「サルバドル―救世主の国」(日本ジャーナリスト会議奨励賞/宝島社)「マスード―愛しの大地アフガン」(第十二回土門拳賞/新装版・河出書房新社)「人間が好き―アマゾン先住民からの伝言」(産経児童出版文化賞・福音館書店)など。著書に「ヘスースとフランシスコ―エル・サルバドル内戦を生きぬいて」(さがみはら写真賞受賞・福音館書店)など
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感想・レビュー
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けんとまん1007
16
改めて考えてしまう。生きるとは、暮らすとは、そして、家族とは?と。確かに、経済的・物理的な面では、厳しい状況でもあるし、それからの制約も大きいものがある。ただ、それでも、家族で暮らしを営んでいくことの素晴らしさがある。それが、一枚の写真から伝わってくる。同じ地球という星の一員。2016/09/30
ヒラP@ehon.gohon
14
ザビット一家が、自分たちで家を建てる記録写真になるのでしょうか。 戦争という底辺に有るものを意識しないと、ただの記録写真であり、写されている人たちののびのびした表情から受けとるものは少ないのかもしれません。 あくまで戦争と平和という戦後を生きようとする家族たちなのです。 解説がないと、ちょっと入っていけない写真集かもしれません。2019/02/20
ツキノ
14
コソボ自治州ブコビッツ村に住むザビット一家に再会する著者。三世代五家族33人で暮らしていたのが現在はザビット一家のみになった経緯もちらりと出てくる。6人兄弟が7人になっていて、さらに8人目が生まれる。夏休みの最中で家づくりの手伝いをする子どもたち。無邪気な表情がいい。ザビットは妻のサニエに100回くらいたたかれたことはあるけれど、一度も手を挙げたことはない。つつましくとも家族が明るく生きている。2003年当時の写真だけれど、いまの一家はどうしているのだろう。2016/01/16
ジョニーウォーカー
12
読友推薦本。本当に大切なものはお金じゃ買えない…なんて自分が言ったところで、ものすごく陳腐でキレイごとにしか聞こえないが、この写真集を見ていると心からそう思えてくる。90年代 ユーゴスラビアの内戦により国を追われ、コソボで再び生活を始めたザビット一家。トラックの荷台に幌をかけただけの仮屋に、家族9人が肩を寄せあう貧しい暮らし。けれどそこには悲壮感などまるでなく、もうすぐ完成する新居に胸をときめかせる、親子の屈託のない笑顔があった。将来の希望にまっすぐなその姿、正直うらやましいと思った。図書館本。2010/08/07
遠い日
11
紛争後のコソボ、ザビット一家との再会を機に、一家が自分たちの家を自力で建てていくようすをドキュメンタリー形式で写真に収めていく。子沢山の一家。子どもたちの笑顔は眩しいばかり。貧しさの中で、子どもも重要な働き手だ。とはいえ、一家の主のザビットは至ってマイペース。他人からは「怠け者」と言われるくらいのんびりと仕事をする。だが、彼の言う「モノはそんなに大切じゃない。家族がいれば生きていける。」ということばに、なんとも言えない「本当」を感じる。結局滞在の1ヶ月のうちに家は完成しなかった。彼らのその後を知りたい。2020/09/24