出版社内容情報
【文学/日本文学評論随筆その他】震災と原発事故、若者の就活、特定秘密保護法、従軍慰安婦問題、表現の自由……著者の空前絶後の傑作。日本が直面する問題を何よりわかりやすくほどき、一歩先の未来にむけて深く広く考える、大評判の朝日新聞論壇時評の新書化。
内容説明
大きい声より小さな声に耳をすませる。震災と原発、特定秘密保護法、若者の就活、ヘイトスピーチ、従軍慰安婦、表現の自由などを取りあげながら、壊れた日本を作り直す、絶望しないための48か条。著者の前人未到の傑作。
目次
ことばもまた「復興」されなければならない
非正規の思考
みんなで上を向こう
スローな民主主義にしてくれ
柔らかくっても大丈夫
「そのままでいいと思ってんの?」
一つの場所に根を張ること
「憤れ!!」
「憐れみの海」を目指して
民主主義は単なるシステムじゃない〔ほか〕
著者等紹介
高橋源一郎[タカハシゲンイチロウ]
1951年生まれ。作家、明治学院大学国際学部教授。横浜国立大学経済学部中退。1981年『さようなら、ギャングたち』で第4回群像新人長編小説賞優秀作、1988年『優雅で感傷的な日本野球』で第1回三島由紀夫賞、2002年『日本文学盛衰史』で第13回伊藤整文学賞、2012年『さよならクリストファー・ロビン』で第48回谷崎潤一郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハイランド
158
人間は過激な言葉に酔いやすい。筆者も「人間を動かすのは『ロジック』ではなく『エモーション』である」と述べている。今政治の中で最も巧みに人々のエモーションを使いこなしているのは、現政権だろう。若い世代で愛国がもてはやされ「売国奴」「日本から出ていけ」という言葉がネットで飛び交う。今必要なのは民主主義が成立する必須条件である情報公開と、対話を重視するスローな民主主義であるという。なるほど。現実の政治は逆だけどね。「日本を取り戻せ」と叫ぶ前に、民主主義を我々が取り戻すために、立ち止まる必要があるのかもしれない。2017/04/29
へくとぱすかる
158
上から「こういうものだ」と押しつけられるものではなく、本当に自分自身から出発する民主主義。たった今もこの国を蝕んでいく、絶望的でやるせない空気を、何とか吹き飛ばしたいと、だれもが思っている。しかしそのためには、今一度、面倒くさがらずに、目の前の「おかしさ」を見つめなければならないだろう。ほんとうの弱者が、これ以上切り捨てられることのないように。2015/12/06
めろんラブ
129
読みながら、何度かグッと熱いものがこみ上げてきました。そして、何だか泣けて仕方がありませんでした。それは、本書の帯にある言葉をもじると、「日本人に民主主義はムリなんだ。それはもう絶望的に」という哀しい諦めを、私が必死に飼い慣らそうとしていたことに気づかせてくれたからです。作家が(作家にもよりますが)社会や政治の問題を取り扱うと、こうも繊細で心に寄り添うものになるのかと驚嘆。専門家の上から目線ではなく、地べたから問いかける視線の優しさが表れたタイトルも◎。2015/06/29
fwhd8325
93
民主主義というのは、都合のいい言葉だと思います。小学生の頃、多数決で決めることが民主主義だと信じていました。それは、あまり間違っていないのだろうけれど、一方で、それに対抗する考え方がしっかり確立していなければ、民主主義の存在意義はないんじゃないかと、ぼんやりと感じます。高橋さん自身が思いながらもはき出せない弱さも書いている点に、この著書が凄いと感じます。214ページのスーザン・ソンタグさんの考え方こそが、正論だと強く感じます。こういう著書を読み、熱く語ることができる社会が必要なのだと思います。2016/04/28
yooou
89
☆☆☆☆★ 駆け抜けずちゃんと話をきく。いろいろな意見に耳を傾ける。今の日本人に最も欠けているのはこの基本的なところなのではないかと思います。慌しく話半分でわかったつもりになってしまう自分を自戒する意味でも正座して読むべき本だと思いました。2016/01/31