出版社内容情報
「レーゾンデートル」という単語に魅了された少女時代、機上から見た風景の色、手塚治虫をはじめとする漫画家たちへの思い……。みずみずしい感性と、数々の漫画代表作に繋がる人生観や思索の一端に触れることができる傑作エッセイ集。《解説・穂村 弘》。
内容説明
私は何のために生きているのだろう。あの頃は今がどんな未来へ繋がるか、考えもしなかった。そしてやっぱり、ここにいる―。繊細で瑞々しい感性と、代表作に繋がる深い思索に圧倒される、鮮烈なエッセイ集。新たにエッセイ2編とあとがきを加え待望の文庫化!
目次
青緑色の池
先生の住所録
青の時代―「アイロンをかける女」
青のイメージ
「声」の通り道―天童大人「聲ノ奉納」
宙空漂う「なぜ」の問いかけ
一瞬と永遠と
地球の半分の雪
安里屋ユンタ
私は生き物。同じ生き物。〔ほか〕
著者等紹介
萩尾望都[ハギオモト]
1949年福岡県生まれ。漫画家。69年デビュー。72年より連載が始まった『ポーの一族』は少女漫画界の歴史を変えた金字塔となる。76年、『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、97年、『残酷な神が支配する』で手塚治虫文化賞マンガ優秀賞、2006年、『バルバラ異界』で日本SF大賞、11年、全作品で日本漫画家協会賞文部科学大臣賞受賞、12年、紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
honoka
54
このエッセイには著名な絵画から小説、映画、舞台、バレエ、漫画についての記述があり、結構知っているものも多いので親近感が湧くもその考察や妄想に至るまでに打ちのめされる。「キュビズムがてんで解らなかった」という導入に騙されてはいけない。とほほ。萩尾先生は天才だと思う。けど持って生まれたその才能を無自覚に耕すことのできる天才と思う。家族の反対に揉まれながら作品を描き続けていらしたとあり、改めて尊敬と感謝の気持ちでいっぱいである。2016/06/01
ぶんこ
51
有名な漫画家さんという認識しかなかったので、ここに書かれている読んだ本、観た映画等々の「難しそうな作品ばかり」なこと。読んでいて、私は全く読んでいない、観ていない。読みたいとも観たいとも思わないのは、理解できないと思えるからです。萩尾さんの感性の凄さに感嘆。ご両親に漫画を描くことへの理解がなかった事、辛かったと思いつつ、だからこそ大成されたとも思える。この本を読んで良かったと思ったのは、寺山修司さんとのお仕事。くちゃくちゃな紙のまま応募してきた作品への、寺山さんの対応を知って嬉しかったです。2022/04/26
Y2K☮
50
宇宙観とブックガイド、そして両親との確執が軸を占めるエッセイ集。「スターレッド」や「11人いる!」の生まれた背景がうっすら。やはり好きなものを創って認められたい。ブラッドベリはいずれ本腰入れて挑もう。あとピカソの青の時代や白鳥の湖、ノルウェイの森などに関する着眼点の鋭さ。著者の言葉は天才肌のアスリートさながらに速筋が強く、その跳躍力にしばしば置いていかれる。思い込みの激しいタイプ? でもそれ位己の世界に没頭できるからこそ、ジャンルの異なる傑作を奔放に生み出せた。物語の一瞬の内に煌めく永遠、私も見つけたい。2016/07/06
Kanae Nakajima
38
萩尾先生の作品から受けるイメージと同様に、非常に端正な文章で、ご自身が出会った、きゅっとくる物いろいろについてのエッセイ集。萩尾作品の、いつ読んでも古く感じない、そして常に新しい驚きがある秘密の一端を覗いたような気がします。特に後半の映画や小説、手塚治虫作品の解説は白眉。「戦艦ポチョムキン」なんて読みながら映像が視えるようでした。日常の風景から、舞台、絵画、旅行先ですら常に考え続けていることは、もはや哲学的ですらあります。そして保存してあるEテレ「浦沢直樹の漫勉」を観かえして、想いをのせる技術にまた感動。2016/12/16
はづき
30
「これらエッセイは、私が出会った、きゅっとくる物いろいろです。その出会いは一瞬の煌めきで、煌めきは永遠に自分の中に残ります。」 萩尾望都さんの作品批評が、いずれも短文ながら目のつけどころ、表現の仕方がさすが。そんな風に解釈ができる人だからこそ生み出せた作品群なのだと。2016/08/22