出版社内容情報
【文学/日本文学小説】人間の言葉は話せないけれど、小鳥のさえずりをよく理解し、こよなく愛する兄と、兄の言葉を唯一わかる弟。小鳥たちの声だけに耳を澄ます二人は、世の片隅でつつしみ深く一生を生きた。やさしく切ない、著者の会心作。解説・小野正嗣。
内容説明
人間の言葉は話せないけれど、小鳥のさえずりを理解する兄と、兄の言葉を唯一わかる弟。二人は支えあってひっそりと生きていく。やがて兄は亡くなり、弟は「小鳥の小父さん」と人々に呼ばれて…。慎み深い兄弟の一生を描く、優しく切ない、著者の会心作。
著者等紹介
小川洋子[オガワヨウコ]
1962年生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒業。88年、「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。91年「妊娠カレンダー」で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』で本屋大賞と読売文学賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、2006年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
抹茶モナカ
388
最後まで読み通し、また冒頭の一段落を読み、「素敵な小説だったな。」と、思った。静かな文体で、小鳥の小父さんの生涯を描いた小説。小川洋子さんの作品らしく匿名の街で起こる物語。何処か魔術的な文体が、時に妖しく響く。小鳥という儚い存在を中心に、ちょっとアウトサイドの兄弟の話を展開するので、ガツガツ読める本ではなく、その世界観に引き込まれて、物語の魔力を楽しむ本。小鳥という儚い存在について書かれているためか、読者を優しい気持ちにさせもする不思議な本。2016/08/12
エドワード
322
世の中には動物に真の愛情を注げる人とそうでない人がいる。鳥としか会話できない兄。兄の<ポーポー語>を両親に伝える弟。兄弟の楽しみは近所の幼稚園の鳥の声を聴くこと。両親と兄の死後、独りになった弟に、園長が鳥小屋の世話を依頼する。懸命に世話をする<小鳥の小父さん>。なんと優しい響きだろう。園児たちは彼に感謝の手紙とメダルを贈る。しかし幼児誘拐事件が起こり、新しい園長は彼を幼稚園から締め出す。それでも彼は<小鳥の小父さん>であり続けた。彼は決して孤独ではなく、ひっそりと幸せだった。哀しくも不思議に暖かい物語。2016/02/03
mae.dat
317
本書の閑かな凄みを記す事は難しくて。主題も分かる様な、分からない様な。洋子さんワールドを形成している事は間違いないのですけど、テーマを掴み損ねているね(´๑•_•๑)。でも先ずはお兄さんですよ。独自の言語を操っているのだけど、それは一体って言う。でも思ったよ。言語って色々不思議があるのですけど。聴いた音声をそのまま発話できるって能力が備わっている事は意外に凄いのではと。お兄さんは出力にだけに難ありの可能性とか。いや、鳥の囀りですよね。鳥の鳴き声にも文法あるそうですよ。一瞬現れた言語学者さん。2024/03/14
やすらぎ
302
人には決して聴こえていないはずなのに心震える音色がある。小雨降りしきる中で目を瞑れば見える結末があるように。出逢えたことに感謝し涙し、大切な温もりほど幾重にも優しく包み込みたくなる。時に鳥籠を抱きしめたくなる夜もある。おやすみ。日々の別れを告げるために。誰かが傍にいればきっと安心して眠れるだろう。おはよう。小さな幸せの訪れ。もう羽ばたいているんだ。黒い瞳のさえずりに、私たちは微笑みの奥に隠してしまった言葉を探している。ありがとう。伝えるほど切なくなる。ずっと一緒にいたいのに。誰しもそんな人生を送っている。2023/04/25
酔拳
269
人の言葉を話せないけど、小鳥の言葉を理解できる兄と、兄の言葉を理解できる弟の静かな話です☆ やがて、兄は他界して弟は、兄が愛した、保育園の鳥小屋の鳥たちの世話をはじめ、ことりのおじさんと呼ばれるようになります… ことりのおじさんのささやかな生活が、静かにそしていとおしく、描かれています☆(博士の愛した数式に漂う空気感は似ています☆) 2017/03/27