朝日文庫
北朝鮮へのエクソダス―「帰国事業」の影をたどる

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  • サイズ 文庫判/ページ数 394,/高さ 15cm
  • 商品コード 9784022617064
  • NDC分類 316.81
  • Cコード C0131

内容説明

日本政府と官僚、北朝鮮、韓国、米国、ソ連、中国、そして赤十字。冷戦下、各々の思惑が絡み合い、「帰国事業」は始まった。世界を旅して衝撃の新資料を発見、隠蔽された歴史の真相を読み解く。歴史に翻弄された個人の人生を真摯に見つめる筆者の眼差しが心を揺さぶる。

目次

旅立ち(朝日一九五九年;ジュネーブ、夢の町)
境界(東海を渡って;わらべの踊る野;内なる境界)
策略(影の外務省;氷山の一角;平壌会談;特別使節の極東歴訪;最初の“帰国”;決議第二〇)
協定(大同江のほとりの夢の家;外交官の日誌;ジュネーブからカルカッタへ;“沈黙”のパートナー;帰還案内)
到着(約束の地へ;終わらない旅;新潟の柳)

著者等紹介

モーリス‐スズキ,テッサ[モーリススズキ,テッサ][Morris‐Suzuki,Tessa]
1951年イギリス生まれ。オーストラリア国立大学教授。専門は日本近現代史・思想史

田代泰子[タシロヤスコ]
1944年生まれ。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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Willie the Wildcat

44
交錯する組織の思惑に翻弄される帰国者という構図。記録が不十分故に見えない傷跡。南北統一・独立、民族意識高揚も政略の一環。冷戦という大枠の中、SF条約、US大統領選、改定日米安保、韓国政変など時勢の悪循環も否定できない。中でも痛いのはUSの沈黙。国際赤十字の苦しい胸の内が印象に残る。著者自身が語るように真相の解明には程遠いが、丹念に1つ1つの事実を結びつけることで見える枠組み・・・。今後の更なる機密文書公開を期待。2016/01/07

松本直哉

14
冷戦下で日本と南北朝鮮と米ソの意地と見栄の張り合いの中で将棋の駒のように翻弄されて、中には自発的意思の場合もあったにせよ多くは訳の分からぬまま北朝鮮に渡った九万もの人々の苛酷な運命。この帰国事業と日本の国民年金制度がほぼ同時期に始まるのは偶然ではない。外国人である朝鮮人は年金の対象外なので祖国へというわけだ。それが強制送還でなく善意のような見せかけで行われたことに深い悪意を感じる。結局日本にとって朝鮮人は邪魔者で排除の対象でしかなかった。日本人が外国人にたいして「良きサマリア人になれる日はいつ来るのか2016/11/17

デューク

3
冷戦期に実現した、日本から北朝鮮へのエクソダス(脱出)。その実像を追ったノンフィクション。 筆者はこの大事業を、新潟、平壌、ジュネーブなどに足を運び、丹念な取材を積み重ねていく。ともすれば発散しがちな大きすぎるテーマでありながら、読む者の心をつかんで離さない筆者の筆力。一冊の本で全貌をつかめるほど、生易しいテーマではない。だが知られざる大事業の下で、歴史に翻弄された個人を負った筆者の大仕事は、刮目に値すると思う。おすすめ2020/05/25

BLACK無糖好き

3
北朝鮮への帰国船が到着した時に遭遇した光景で「夢の楽園」が幻想であった事を思い知らされた帰国者達。この壮大な帰国事業には関係国による複雑な政治的思惑がある中で、赤十字国際委員を絡めての人道的な計画とされた。その経緯が克明に描かれている。時代の波に翻弄され苦悩の日々をおくっている人々がまだ今現在にも多くおられるのだろう。2014/11/23

Masayuki Shimura

1
【暗黙の片道切符】著者が「帰国事業」の「犯人探し」のために調査を行ったという明確な立ち位置を取っているため、それをどう解するかが本書を評価する上で読者によっては重要になるかもしれませんが、その立ち位置ゆえに本書が明らかにすることの意義がすべて失われるわけではないように思います。読後に様々な思いに襲われた一冊でした。2018/06/20

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