内容説明
「村に戦争が来る」「村が戦場になる」そんな噂を聞いたとき、ただ呆然としていれば、ヒトもモノも敵方の雑兵たちに「乱取り」されてしまう。この乱世を行き抜くための危機管理の焦点に城と隠物があった。多くの落城の光景の中に女性や子どもの姿がある。城は村人たちの避難所であった。だから、城の維持・管理は彼らの責任で行った。城から遠ければ、山中の「村の城」に篭もって難を逃れた。それでは財産はどうするか?持ち運べないものは穴を掘って埋めて隠したり、寺社や他所の村や町に預けたり。「隠物」「預物」の習俗は生き残り策の土台にあった。発掘された銭甕や地下の穴など考古学の成果に注目した著者は新たな視点から戦国びとの危機管理の実態を描き出す。
目次
1 城は民衆の避難所(中国古代の城郭の原像;西欧中世の城郭の原像を探る;危機管理の習俗の発見;戦国の城の維持・管理;戦国の城は村の避難所;秀吉軍襲来下の城)
2 隠物・預物の世界(穴を掘って埋める;隠物・預物の習俗)
著者等紹介
藤木久志[フジキヒサシ]
1933年、新潟県に生まれる。新潟大学卒業・東北大学大学院修了。文学博士。立教大学名誉教授。日本中世史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こまさん
3
必要により再読。刊行されてすぐ入手して以来だから、約8年ぶりか。戦国時代、戦争に追われる人々の習俗を丹念に検証した藤木朝日選書シリーズ。人々のリアルな状況を考えることが出来て今読んでも興味深い。2018/02/02
とし
1
「村の城」を提唱した藤木氏の著作は面白い。中世の戦時における庶民の危機管理というのが研究の共通のテーマで、この本は過去の著作に拠りながら、戦時の庶民が財産をいかにして兵の略奪から守っていたか、「隠物」、「預物」といった当時の慣行について紹介してくれる。 研究書の硬さはなく、語り口は随筆のように軽妙。当時の史料も現代語訳や意訳してくれていて読みやすいのだが、その内容は濃い。 中世を生きた人々の息吹を生き生きと想像できるのが愉しい。 2014/03/24
邑尾端子
1
戦国の城というとその城主たる大名や武将たちとの関係で語られることが多いが、本書は民衆と城の関係を読み解いていく主旨である。自力救済社会の民衆にとって「城」とはなんであったのか、城は必ずしも領主だけのものではなく、村のものであり民衆のものでもあった。城の普請や維持管理を日常的に請け負う村人たち、有事の際に城に籠る村人たち、財産の預け場所でもあった城、様々な視点で語られる城と民衆とのエピソードが面白い。2014/02/13
一城別郭
0
村人たちと城の関係を、中国やヨーロッパを参考にしながら考えてゆく。また、戦になった(なる)時、村人・町人は持ち物をどうしたか。戦を村人の視線で考えた一冊です。2011/01/14
ひろゆき
0
昨今の事情で、ゴールデンウイークを中心に私の地方の山城を歩いた。細かく調べればあるわあるわ小城たち。なぜこんなところにから、だれがどのように普請したのかなどの疑問ゆえの読書。避難場所としての城がしっくりくる。城とともにあった農民たちの生活を追想できた。2020/06/22