朝日選書<br> アウシュヴィッツは終わらない - あるイタリア人生存者の考察

朝日選書
アウシュヴィッツは終わらない - あるイタリア人生存者の考察

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  • サイズ B6判/ページ数 264p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784022592514
  • NDC分類 976
  • Cコード C0311

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

60
収容所とは「ドイツの社会機構の内部では」ユダヤ人の「ただ一つの存在方法にほかならない」のだという言葉が衝撃でした。自分はドイツが降伏したことを知っていているけれど、当時を生きる人々には未来など分からない。飢え、寒さ、労働、暴力、生存競争のために個々が絶望的に孤立し、ガス室へ消えてゆく「死を理解するにはあまりにも疲れ」きった仲間たち。作者はそんな日々を淡々と冷静に語りますが、だからこそ冒頭に掲げられた詩の言葉が鋭く迫ってくるようでした。「これは命令だ。/心に刻んでいてほしい」「こうした事実があったことを」。2019/10/16

翔亀

52
「夜と霧」と同じく収容所(ラーゲル)の体験を具体的かつ冷静に描く。飢え、疲労、恐れ、苦痛といった言葉は、自由な人間によって作られた言葉であり、ラーゲルのそれを説明するには別の新しい言葉が必要だ、等描写される極限状態は両者共通する。一方フランクルのように、人間の崇高さを謳い上げたりしないし、感動を与えるものではない。善人と悪人、利口と馬鹿、幸運と不幸の区別はあの環境では無効になり、人間には「溺れる者と助かる者」の二種類がいるという冷徹な事実だけが残る。これは絶望的に個人が孤立している世界の絶望的な記録だ。2015/10/31

Mayuzumi

41
著者はそこで、日常の人間の目ですべてを見る。収容所の門をくぐった人々のなかに辛うじて残っていた、人間の最終の境界線のようなものが、次々と消えていくのを。人間がこのような、得たいの知れない地に行けること、且つそこで尋常とは程遠いにせよ、確かに人間として生活し得るということを。彼は寒々しい予感に打たれる。恐らくここを出られたとして、もはや外の世界などはなく、彼の見るすべてのものに、烙印のように、アウシュビッツの六字が捺されていることを。2017/06/25

ω

40
読友さんに教えてもらった本ω イタリア人の生存者である作者が、収容所で起きたことを詳細に書き記す。非難や恨みつらみは述べず、状況や心理を克明に書いている。「心の中の閃きは消えていて、彼らを生者と呼ぶのはためらわれる。彼らの死を死と呼ぶのもためらわれる。死を理解するにはあまりにも疲れ切っていて、死を目の前にしても恐れることがない。」2021/08/11

chanvesa

33
「溺れるものと助かるもの」(104頁~)で述べられることを読んでいると、絶望的になる。正気であることが許されない空間なのだ(「ここになぜなんて言葉はないんだ」27頁)。)『夜と霧』には、何とか希望を見出そうというフランクルの精神があるが、レーヴィのまなざしは淡々としているが故に、読んでいてつらくなる。2018/02/12

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