出版社内容情報
下着が人の気持ちを変える? 弾ませる? さびれた商店街に花ひらいたランジェリーショップ。店を訪れる老若男女の小さな人生模様。ミステリー作家が、地方都市の日常とそこに生きる人々の屈託と希望をえがく摩訶不思議ほのぼの短編連作集。
内容説明
さびれた商店街に花ひらいたランジェリーショップ、そこに出入りする人々の人生模様。レースやリボン、小さな花柄の下着が、行き詰まった人間関係をなぜかほどいていく。地方都市に生きる人々の屈託と希望をえがく、摩訶不思議小説集。
著者等紹介
近藤史恵[コンドウフミエ]
1969年大阪府生まれ。作家。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で鮎川哲也賞を受賞しデビュー。2008年『サクリファイス』で大藪春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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zero1
294
女性作家にしか描けない連作短編集。田舎の寂れた商店街にできた下着店。この店がきっかけとなった人たちの物語四つ。最初の話は厳しい介護の現実を見せられて空気が重苦しい。病気や男でも女性下着が必要になることを再認識させられた。人は現実に、奴隷のように縛られる。そして何かのきっかけで解放される。縛られるのと解放は他人には理解できないことでも、本人にしてみたら重要。人を描くのが小説なら、本書は間違いなく小説だ。近藤は自転車競技を描いたと思えば、こうした身近な世界も書ける。地味だが見事。共感した読者がかなりいる。2020/03/09
風眠
268
華やかな下着は女のアイデンティティ。母親に対する反抗であり、自分だけの秘密であり、シャンと背中を伸ばせる自信をくれるもの。機能的にはまったく必要のないレースやリボン、ちいさなバラの飾りやシフォンのフリル。けれども、そういうムダなものが女には特別で必要な要素なのだ。乳がんと闘いながらランジェリーショップを経営するオーナー、母娘の確執と介護問題を抱えている。人には見せない下着と、人には見せない心、シフォンやレースで包み込んで、だからきっと、今日も頑張れる。女の心の機微と、華やかな下着への想いが重なる物語。2013/06/22
takaC
266
第一話・第二話の役割がわかりにくいというかよくわからない。だから「摩訶不思議小説集」なのか?2016/02/14
エンブレムT
214
流れるような書体で『シフォン・リボン・シフォン』と書かれた白い品の良い紙袋が4つ並んでいる。綺麗なリボンを外し、丁寧に包まれたハトロン紙を開けると、中からは思いのほかドロリとしている3組の親子の物語が・・・。自分の価値観が絶対で、子供が成人してもそれを押し付け続ける親のエゴ。子供の心に刺さったまま、抜けないでいる棘。・・・レースとリボンとシフォンで彩られた魅力的で美しいランジェリーやナイトウェアは、優しく身体を包み込むだけでなく、心をも大切に包み込む。それは、目には見えないモノと戦うための、柔らかな武装。2013/07/19
*すずらん*
172
読み終わった後 柔らかいシフォンで包まれて、そっとリボンをかけられた気がした。私が私を大事にしてあげて、初めて私は安らげるのではないか。誰かに誰かにと他に求めるのではなく、自身の内側に向かって手を伸ばす事も大切な事なのだ。また今作では、家族の再生という一面も描かれている。最後のかなえと母親との距離の取り方は、とてもリアルでそして何よりも優しかった。そう幸せとは必ずしも美しい物だとは限らない。キラキラした物が幸せの正体である訳ではないのだ。手に届く・声が届く範囲の中に、私達の幸せは詰まっているのかもしれない2013/07/06