内容説明
人はなぜ暴力をふるうのか。暴力は人の心と脳にどのような影響を及ぼすのか。暴力をふるう子ども、暴力を受けている子どもにどう接したらよいか。傷つき悩める子どもたちが生命力をとりもどすために、第一歩を踏み出そう。多分野の研究の動向をふまえ、豊富な実践経験から紡ぎだされた本書は、生きるパワーを育むために不可欠な具体的実践的方策を紹介する。
目次
1 心とからだの不思議
2 人権という名の心のちから
3 エンパワメントと自尊の心
4 性差別社会はさまざまの暴力をうむ
5 体罰の六つの過ち
6 性虐待のほんとうの残酷さ
7 ホンネを語る性虐待加害者たち
8 ホモセクシュアリティへの攻撃
9 ヒトラーに惹かれる少年たち
10 子どもたちのエンパワメント
著者等紹介
森田ゆり[モリタユリ]
エンパワメント・センター主宰。立命館大学客員教授。1982年より米国で子ども・女性への暴力防止専門職の養成に携わる。90年からカリフォルニア大学で主任アナリストを七年間務める。97年より日本に在住。朝日ジャーナル・ノンフィクション大賞、産経児童出版文化賞、保健文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Takanori Murai
24
子どもへの虐待のニュースは途絶えることがない。私にも力になれることはないのか。そんな思いからこういった本を手に取っている。本書において特にはっとさせられたのは性虐待の残酷さについて。受けた行為自体への恐怖にとどまらず、人間不信、自責・自己嫌悪、無力感へとつながる。対して加害者には罪意識は低く、社会も加害者側に甘い。残忍な性暴力を「いたずら」で片づけてしまう。世間の認識を変えて行かねばならない。虐待から守れるのは専門家ではなく身近な人間。子どもたちのエンパワメントに微力ながらかかわっていきたい。2019/11/10
ゆう。
9
自分のあるがままを尊いと思う自尊心。それを暴力によって奪われた子どもたちの実態や問題点を指摘すると同時に、子どもと大人のエンパワメントという関わりについても考えることのできる1冊です。また、差別社会がもたらす暴力性についても述べられています。また、子どものエンパワメントの根底には安心が必要だと述べられていて考えさせられる本でした。2014/05/12
ひろか
4
森田ゆり氏の研修に参加したので、総ざらい。2022/07/23
ざまたかこ
1
暴力について、学校では「いけません」と教わるけど、暴力の定義とか暴力にかわる問題解決の方法はあまり教わらなかった気がする。性暴力の加害者のプロフィールは読むのが辛かったけど、それも含めて子供たちと話せたらいいだろうなあと思う。まずは大人とかもしれないけど。2019/03/05
saiikitogohu
0
「個人のちからとは、社会、環境とのかかわりを抜きにしては、測ることもできなければ評価することもできない。十のちからは環境が変わることで、一しか出ないこともあれば、二十に増幅することもできる」(67)。「エンパワメントとは、人は生まれながらに様々な素晴らしい力を持っているという信念から出発する考え方である」(68)。人を変える、のでなく、人が変われる環境をつくる。誰かを教育したり援助したりするときに、忘れてはいけない視点。2017/10/06