内容説明
『また逢う日まで』『津軽海峡・冬景色』『北の宿から』『時の過ぎゆくままに』など五千曲を作詞した稀代のヒットメーカーの処女作。言葉の達人はいかに時代の芯を解剖して、既成概念を突破したのか。ヒットの秘訣とは何だったのか。日常生活のなかで最初に試みるべき点から指南した本書は、作詞家のみならずすべての創作家とその志望者に役立つ実践的仕事論。
目次
序章 だれでもなれるわけじゃない―プロの資格について25のテスト
第1章 歌は世につれというけれど―阿久流現代作詞論
第2章 「この道一筋」はもう古い―ぼくはこうしてデビューした
第3章 ヒットはこうして生まれた―阿久式ヒット製造法
第4章 こうすれば詞が書ける―阿久悠作詞学校
別章 だれに見てもらうのか―作詞家になりたい人に
僕の歌謡曲論
著者等紹介
阿久悠[アクユウ]
1937‐2007年。本名・深田公之。兵庫県淡路島に生まれる。明治大学文学部を卒業後、広告代理店に勤務して番組企画・CF制作に関わった後、フリーとなり作詞を中心とした文筆活動に入る。作詞代表作に『また逢う日まで』『津軽海峡・冬景色』『北の宿から』。97年菊池寛賞受賞、99年紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
99
阿久さんが35歳の時に書いたものとその作詞活動が波に乗っていた時に書いたものを合わせて副題にあるようなヒット・ソングの技法論となっています。前半がサラリーマンであった時の経験論のようなものが出ていて楽しめました。最初にある25のテストがあってこれで100点満点でないとだめといわれているのはやはりプロの厳しさを最初から示されていると思いました。2018/04/25
しゅん
17
再読。阿久悠の作詞論は「歌手という商品をどうヒットさせていくか」というポイントから議論を進めていて、コピーライター的な思考とも言えるわけだが、興味深いのがそれが「芸術」信仰への批判であると同時に阿久悠の芸術性を担保しているという点だろう。72年に刊行された本書のお題は当然古いにも関わらず、今読んでも書かれていることに違和感を覚えないのは、本質をついているとも言えるし、作詞という概念が進歩していないとも言える。それにしても、「作詞家」の役割は現代において大幅に縮んでしまったように感じるのは気のせいだろうか。2018/01/09
さばずし2487398
14
1972年刊行。単に作詞方法だけでなく、歌詞での歌手の育て方、業界の作詞家の在り方、日本の歌の捉え方や背景など、業界や言葉に関しかなり広い分野を述べている。和田アキ子の話が面白い。言葉を増やすトレーニング方法は作詞志望でなくても参考になるものだらけ。時刻表とガイドだけでご当地ソングを作るのが面白そう。あくまで当時の業界で売れる為に書いた歌詞が、結果として今日まで名曲として残るって考えたら凄い事だ。何の情報もない田舎育ちだからこそ言葉の感性が深まったという回顧録は現代の状況と色々比較して考えてしまう。2020/09/20
壱萬弐仟縁
11
1972年初出。序章に作詞家適性テストがある。4の乱読家はあっている。僕は向いていない(苦笑)。「いいものは短時間でできる」(18頁)。藝術はそういうものだろう。科学は時間をかけただけいいものができるのとは対照的なのだろうか。低劣。支離滅裂。非論理性。無益といっても、大衆性。飛躍。超論理性。無害とも書ける(35頁)。一日一詞(74頁)。僕はシナリオライトの経験しかない。即興だった。和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」(森田公一作曲136頁)はいい歌詞に思う。孤独だが鐘は幸せ。大衆不在の今、ヒットは難。2013/09/06
今庄和恵@マチカドホケン室/コネクトロン
9
「君にもできる」「簡単にできる」とあるものをいくらやったって役に立たない、だれにでもできる程度のことやったってなんにもならない。莫大な量のインプットとそれをアウトプットする莫大なエネルギー、それがなくては仕事など出来ないのだ。巻頭にある作詞家になれるかどうかのチェックリスト、これ、どんな仕事にも当てはまるんじゃないかと思った。2013/08/29