内容説明
子どもたちは、日常をこえた世界への通路をもち、そこでの深い体験の力に支えられて生きる。アキラはその異界とのつながりがうすく、逆にアリサは日常を逃れて異界に閉ざされてしまって、ともに実生活に適応できずに苦しんでいた。二人が、筆者と心の対話を深めるにつれて、癒しのドラマが始まる。子どもたちの癒しは、若いカウンセラーが癒される道でもあった…。
目次
1 異界への通路(子どもと異界;異界へとつながる―アキラの場合)
2 異界を生きる(物語を生きる;癒しの物語が生まれるとき―アリサの場合)
著者等紹介
岩宮恵子[イワミヤケイコ]
1960年生。臨床心理士。島根大学教育学部教授。心理職をめざす学生たちに対して講座で教鞭をとる傍ら、スクール・カウンセラーとして、思春期の子どもたちと対話を重ねている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くりこ
8
様々な理由で普通に適応して生きていくことができなくなってしまった子どもたちのカウンセリングの記録と考察の本です。生きていくために手放してしまったこと、失ったものを取り戻して育ち直していく過程に寄り添うことの難しさをひしひしと感じました。2018/09/18
bittersweet symphony
2
著者は河合隼雄さんの弟子筋にあたる心理療法カウンセラー/学者さん。2人の実例を通じて、子どもの子どもならではの世界とのアダプテーションから、大人として一般社会へ組み込まれていく際の順応が内的・外的要因によって阻害されることをいかに考えるかを問うているものです。いろんな要因がありますが社会全体が幼稚化していたり社会に対する不適応の度合いが大きくなったりというのは、子どもの世界観を上手く成熟した大人の世界観に適応できるような道筋を社会全体がつけられないという要因がやはり大きいのではというのが実感ですね。2009/07/31
海野藻屑
2
異界がなくなるほど悲しいことはないと思う。自分だけではないだろう、自分だけの楽園を捨てられないのは。2017/08/01
TOMTOM
2
様々な症例を取り上げているかとおもったのですが、メインは二人。二人目の症例を丁寧に描かれていて、症状としての表層だけをみていても解決しないのだと、臨床心理の難しさを感じました。あとがきにあった、この本のための書き下ろしである谷川俊太郎氏の詩には涙でした。2009/06/14
ゆるこ
1
たまたま図書館で見つけて引き込まれた。「異界」の力を知った。 自分の全てを賭けて子どもと真剣に対峙する筆者の息づかいが伝わってきて、こちらまで緊張して息が苦しくなる場面もあった。 もう一度ゆっくり読み直さねば。2019/08/28