内容説明
二〇〇八年十二月に、惜しまれつつ八九年の生涯を閉じた著者は二〇世紀をいかにとらえていたのか。何を見つめ、何に希望を託して生き抜いたのか。本書は芸術、戦争、社会主義、ナショナリズム等の主題と自己の足跡を重ね合わせてこの世紀の意味を読み解いた書物であり、若い世代への期待を語った講演と生前最後のインタビュー(二〇〇八年八月)も収録した新編集版である。戦後を生きた知の巨人は旅路の果てに何を語り遺したのか、人間・加藤周一に関心を持つ読者にとって必読の書である。
目次
第1部 私にとっての二〇世紀(いま、ここにある危機;戦前・戦後その連続と断絶;社会主義冷戦のかなたへ;言葉・ナショナリズム)
第2部 加藤周一、最後のメッセージ(老人と学生の未来―戦争か平和か;加藤周一・一九六八年を語る―「言葉と戦車」ふたたび)
著者等紹介
加藤周一[カトウシュウイチ]
1919‐2008年。評論家・作家。元都立中央図書館館長。東京大学医学部卒業。1951年渡仏、55年帰国。「日本文化の雑種性」などの文明批評、文学・文化・社会に関わる長年の旺盛な文筆活動で広く知られる。近年は「九条の会」呼びかけ人として、平和憲法を守る運動に身を投じた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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呼戯人
15
かなり長い間加藤周一を読み続けているが、この本があることを今まで知らなかった。20世紀を振り返るという本は、他にも鶴見俊輔との対談だとか色々あるが、この本は本当に優れた20世紀論になっている。特に印象に残ったのは、科学者の現状維持的態度に対して倫理的直観が上回るという議論をしているところなどである。人権と平和主義が日本国憲法の特色で、この二点を守ることを通して日本の軍国化を防ぐことができるという主張なども印象に残った。また文学の価値は、価値の転換にあるという論点など強い印象を受けた。さすが知の巨匠である。2024/02/15
ネムル
10
倫理より科学が先立たないために、学問が足枷にならないために、世界の声に耳を傾けるために。アンゲロプロスのとりわけ大好きな『永遠と一日』が話題にあがり、テンション上がる。2018/12/31
えふ
3
よく飲み込めないところがたくさんあるけど、面白かった。今を生きる世代が戦争の責任を抱え込むのは違うけど、日本人の持つどういった価値観が戦争を起こしたのかは、次に戦争を起こさないためにもきちんと振り返らなければいけない、というにはそうだなー、と思いました。学校の歴史の授業から何かを考えることってないからな。暗記だけ。2013/09/29
ご〜ちゃん
2
「誰か人さまのことを聞いたり触れたりするとき、また聞きではいけないと思う」という言葉にその通りだと思った。自分の目で見て、自分で判断しようと思った。2011/03/15
mamegohan
1
やっぱりスケールが違う。知識人とはかくあるべきです。言葉・ナショナリズムの章は一気に読めた。『文学』の定義に納得。2011/08/10