出版社内容情報
日本独特の美意識とは何か。西洋美術と比較した日本美術の特徴、近代における西洋と日本の交流が美術に及ぼした影響に言及し、美術から日本人の精神文化の神髄にせまる卓越した比較文化論。最新のエッセイ3本を増補。
内容説明
西洋とは違う日本独特の美学とは何か?西洋美術史の第一人者で日本美術にも確かな知見を持つ著者が、広い視野から西洋と日本の美術を比較し、日本人の美意識の特質を浮び上がらせる、卓越した比較文化論。近代における西洋と日本の文化交流がそれぞれの美術にもたらした影響にも言及。美術から日本人の精神文化の神髄にせまる最新のエッセイ二本を増補。
目次
1 日本美術の方法(日本美の個性;「もの」と「かた」;視形式の東と西 ほか)
2 東と西の出会い(明治洋画における東洋と西洋;日本の前衛美術;日本のアカデミスム ほか)
3 移ろいゆく美 繰り返される記憶(移ろいの美学―四季と日本人の美意識;花の色はうつりにけりな―絵画と文字の交響;記憶の遺産―無形の文化という日本の伝統)
著者等紹介
高階秀爾[タカシナシュウジ]
1932年東京生まれ。東京大学教養学部卒業。専門は西洋美術史。東京大学名誉教授、大原美術館館長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
38
良書。西洋の美は「力強いもの、豊かなもの」に、日本の美は「小さなもの、愛らしいもの、清浄なもの」に結びつく。又西洋は美を客観的合理的原理で捉えるが、日本は情緒的心情的。メインは具体的な美術論。安井曾太郎の「金蓉」から日本文化を掘り下げる。日本人は各対象には肉迫するが、対象を並列的(平面的)に捉え、西洋と違って全体の配置関係に疎い。文化受容が日本は「追加」であり、西洋の様に「画期」とはならない。だから日本における遠近法の影響より、西洋におけるジャポニスムの方がより本質的だと言う。興味深い話が多数。2018/08/06
壱萬弐仟縁
14
情緒的、心情的。そして、小さなもの、愛らしいもの、清浄なものに美を感じていた日本人像(5頁)。換言すると、否定の美学、切り捨て(15頁)。日本人は西欧人ほど ものそのもの(傍点) に価値を置いていない(32頁)。浮世絵の影響は西欧絵画の流れそのものを変えたほどの強力なものだった(60頁)。大いに自信をもっていい日本文化像。モノクロ絵画がちりばめられながらの解説は快適である。日本人にとって旅とは時間と空間の連続展開でその芸術も連続的(104頁)。室町、桃山時代に切り捨て精神の水墨画が台頭(121頁)。2013/09/15
ミエル
10
美術とは各民族の思想、理想、慣習が色濃く反映したものだと思う。西洋と日本美術の視点の違い、価値観、立ち位置の違いが端的に述べられていて読み易い。いずれの美術であっても東西の文化の移換、流動性が大きく影響する点までは同様だが、その御の根付き方、受け入れの度合いはさまざま。良書。2017/05/15
T M
10
比較文化論を使って日本の美を考える。小さいもの愛らしいもの清らかなもの不完全なものに美を感じ、余計なものを切り落とす否定の美学。ここまではなんとなく認識していたが、(美意識と深い関係がある)記憶の継承とは、時間や自然の結びつきのなかで生き続け、1型の継承2儀礼の反復3土地との結びつきによるものとのこと。特に1が目からウロコだった。物質そのものには価値を置かず、それを超えたところに本質を見る。モノでなくカタ。日本にとって美とは芸術とは過去の遺産を受け継ぎながら自己の世界を創り上げることだ。2016/05/02
ヒロセ
7
西洋美術史の権威である高階先生が、比較文化論的な視点から日本美術の特性を鮮やかに浮かび上がらせるという、とても知的にスリリングな読み物になっています。(色々なところに発表された論文・エッセイが集まった形ですが)文章も美文で読み易いところが素晴らしいと思います。2012/12/11