岩波現代文庫<br> 士魂商才

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岩波現代文庫
士魂商才

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  • サイズ 文庫判/ページ数 302p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006020187
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

強靭な魂や鋭い頭のはたらきをもって,金融・貿易・化学工業等の分野で台頭してきた人物に光をあて,経済を動かすダイナミズムと経済に動かされる人間の様態を描いた小説群.表題作のほか5篇に,丸山眞男氏の批評を併録.奥村宏解説

内容説明

「資本家=悪」という図式では、実業家はおろか、人間自体も描けはしない。強靱な魂や危機を乗りきる知慧、そうした士魂商才をもって、金融・貿易・化学工業等の分野で台頭してきた人物に光をあて、経済を動かすダイナミズムと経済に動かされる人間の様態を描いた経済小説の嚆矢。表題作のほか五篇に丸山真男氏の批評を併録。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

belier

5
古い経済小説の短編集。水俣病初期の時期に書かれた「鶴のドンキホーテ」が目的で読んだ。しかし、この短編集は寓話のようなお話ばかりで、現実の水俣病事件を知っている者にとっては、目的であった上記の作品が一番不満だった。解説にもあるが、作者も想像できないぐらいあまりに大きな事件に発展したのでしかたない。他の小説も微妙だったが、丸山眞男の談話がついているのはいい。丸山は、戦後の日本では士魂が滅びていき「商才悪くないじゃないか」と開き直っているが、あらたな公を生み出していないと指摘した。今も課題のままだと思った。2022/12/16

seer78

5
商人の道が日本近代に独立してあったわけではなく、政府や軍隊とのつながり、大陸政策その他戦争とも関わって、「志士」的な姿勢との近しさが焦点化された作品集。「妖美人」での中国ビジネスと革命党の隠微な関係は面白い。ほぼ明治から昭和初期が舞台の作品で、唯一戦後の話が「鶴のドン・キホーテ」。巻末付録で丸山が言うように、「忠誠と反逆」のうち、前者の契機が薄れ、後者もその対象を捉え得ない。もはや武士の位置は不明になり、道化や狂人としてしか存在しえない時代。武田の文章は美しさに欠け、対象を捉える力弱い。正に散文的な実践。2016/02/22

Miho Haruke

3
『海賊とよばれた男』を読んだので対比、というつもりはなかったが読んだ。明治から昭和にかけて、貿易、サイパン開発、化学工業などの分野で、のし上がった日本人を描いた短編小説集。『海賊』に比べると登場人物がいかにもかっこ悪いし、意味がわからない(文学的)設定も多く、狐につままれたような読後感が特徴的だ。<経済小説の嚆矢>という惹句につられ、『海賊』の如きカタルシスを求めて読むとイライラするだろう。しかし本作には「人間」が描かれている。「欲のふかい浅いで、人間の善悪はきめられない」と筆者もあとがきで書いている。2013/08/21

sansirou

2
どれも良かったですね。何かのきっかけで、「鶴のドンキホーテ」についてちょっと触れていたので、読んでみました。泰淳自身の解説も、なるほど、という感じです。「鶴のドンキホーテ」は、特攻に行く寸前の死を覚悟した男が、破廉恥な行為を行った挙句生き残ってしまった後の物語。しかも、水俣病についても触れている。深いですね。2022/08/23

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