出版社内容情報
オランダにおける雇用・福祉改革と移民排除.対極的に見える現実の背後にある複雑な論理を探る.
はじめに
第一章 光と影の舞台――オランダ型福祉国家の形成と中間団体
第一節 現代政治の歴史的文脈
1 「身軽な国家」オランダの成立/2 一九世紀後半――自由主義と宗派勢力の対抗/3 二〇世紀――「柱」社会と中道キリスト教民主主義政党の優位
第二節 オランダにおける「保守主義型福祉国家」の成立
1 「保守主義型福祉国家」とは/2 大陸型福祉国家の特徴/3 オランダにおける福祉国家の形成/4 民間団体主体の福祉
第三節 中間団体政治の形成と展開
1 中間団体をめぐる歴史的背景/2 中間団体の包摂――マクロレベル/3 中間団体の包摂――メゾレベル/4 中間団体批判/5 紫連合政権の成立/6 審議会制度の改革/7 開かれたガバナンスの模索
第二章 オランダモデルの光――新たな雇用・福祉国家モデルの生成
第一節 大陸型福祉国家の隘路
1 ワークシェアリングを超えて/2 大陸型福祉国家の特徴と限界/3 大陸型福祉国家の構造的問題
第二節 福祉国家改革の開始
1 ワセナール協定へ/2 ルベルス政権下の改革/3 第一次コック政権――分権的制度の改革/4 第二次コック政権――「給付所得より就労を」/5 労使の排除と抵抗/6 バルケネンデ政権下の就労強化政策/7 改革の政治的背景
第三節 パートタイム社会オランダ
1 就労形態の多様化/2 雇用格差と非正規労働/3 非典型労働の「正規化」/4 オランダのパートタイム労働――歴史的展開/5 パートタイム保護を取り巻く制度的枠組み/6 多様な休暇制度/7 日蘭比較からみたワーク・ライフ・バランス/8 フレキシキュリティへの対応
第四節 ポスト近代社会の到来とオランダモデル
1 ポスト保守主義型福祉国家へ?/2 「女性のフルタイム就労」への厳しい視線/3 オランダのパートタイム論争/4 脱工業社会における競争戦略
第三章 オランダモデルの影――「不寛容なリベラル」というパラドクス
第一節 移民問題とフォルタイン
1 ポピュリズムの台頭/2 オランダにおける移民/3 フォルタイン党躍進の文脈/4 フォルタインの登場とイスラム批判/5 二〇〇二年選挙に臨むフォルタイン/6 政治戦略としてのポピュリズム
第二節 フォルタイン党の躍進とフォルタイン殺害
1 「すみよいオランダ」の結党/2 フォルタインの登場/3 「すみよいロッテルダム」の設立とフォルタイン擁立/4 「すみよいオランダ」との決裂とフォルタイン党結成/5 「すみよいロッテルダム」の圧勝/6 フォルタイン党の展開/7 フォルタインの死と総選挙/8 中道右派連立政権の成立/9 フォルタイン現象の衝撃
第三節 バルケネンデ政権と政策転換
1 バルケネンデ政権の八年/2 キリスト教民主主義政党の「自己革新」とバルケネンデ/3 移民政策の転換/4 移民の「選別」の開始/5 社会文化政策
第四節 ファン・ゴッホ殺害事件――テオ・ファン・ゴッホとヒルシ・アリ
1 映画『サブミッション』/2 モハメド・ブエリ――移民二世の青年の急進化/3 「ソーシャル・パフォーマンス」としてのファン・ゴッホ殺害
第五節 ウィルデルス自由党の躍進
1 ウィルデルスの登場/2 ウィルデルスのイスラム批判/3 ヨーロッパ憲法条約否決/4 ヨーロッパ統合とオランダ/5 自由党の設立/6 リュテ政権の成立と自由党の閣外協力
第四章 光と影の交差――反転する福祉国家
第一節 福祉国家改革と移民
1 「移民政治」の顕在化と福祉国家/2 「参加」型社会への転換/3「参加」と義務・責任の重視/4 福祉国家の変質と移民/5 オランダにおける「シティズンシップの共有」
第二節 脱工業社会における言語・文化とシティズンシップ
1 脱工業社会における「参加」の様相/2 脱工業社会における「非物質的価値」/3 新しい「能力」観――「ポスト近代型能力」の浮上/4 「言語によるコミュニケーション」と「能力」/5 言語・文化の再浮上/6 参加・包摂・排除/7 新たな光と影の交差のなかで
参考文献
あとがき
現代文庫版あとがき
オランダ下院議員選挙結果(一九八一‐二〇一七年)
政権一覧(一九八二―二〇一八年)
水島 治郎[ミズシマ ジロウ]
著・文・その他
内容説明
オランダモデルと言われる雇用・福祉改革が進展し、「寛容」な国として知られてきたオランダ。しかし、そこでは移民・外国人の「排除」の動きも急速に進行していた。この対極的に見える現実の背後には、いったいどのような論理が潜んでいるのか。排外主義とポピュリズムの時代を先取りしたオランダの経験から、現代世界の困難を抽出した一冊。
目次
第1章 光と影の舞台―オランダ型福祉国家の形成と中間団体(現代政治の歴史的文脈;オランダにおける「保守主義型福祉国家」の成立 ほか)
第2章 オランダモデルの光―新たな雇用・福祉国家モデルの生成(大陸型福祉国家の隘路;福祉国家改革の開始 ほか)
第3章 オランダモデルの影―「不寛容なリベラル」というパラドクス(移民問題とフォルタイン;フォルタイン党の躍進とフォルタイン殺害 ほか)
第4章 光と影の交差―反転する福祉国家(福祉国家改革と移民;脱工業社会における言語・文化とシティズンシップ)
著者等紹介
水島治郎[ミズシマジロウ]
1967年生まれ。千葉大学法政経学部教授。専門はヨーロッパ政治史・ヨーロッパ比較政治。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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