出版社内容情報
「靖国問題」の本質とは何か.敗戦後に標榜した「平和主義」が徐々に後退し,ついにはA級戦犯合祀に至った「慰霊」追悼の変遷を跡づけ,国家観・戦争観・宗教観こそが戦後一貫して靖国をめぐる最大の争点であることを解き明かす.
内容説明
「靖国問題」の根幹はどこにあるのか。敗戦後に標榜した「平和主義」が徐々に後退し、ついにはA級戦犯合祀に至った「慰霊」追悼の変遷をたどりながら、国家観・戦争観・宗教観こそが戦後一貫して靖国をめぐる最大の争点であることを解き明かす。外交上の軋轢や政治的対立として硬直化した議論に陥りがちな「靖国問題」を、歴史的経緯を踏まえて冷静に考察するための新たな視点を提示する。
目次
第1章 戦前日本の国家と靖国神社
第2章 占領期の靖国神社(敗戦直後の臨時大招魂祭;神道指令と靖国神社;「慰霊」の神社への転換)
第3章 一九五〇年代の靖国問題(戦後の平和意識と靖国神社の平和主義;合祀の進展―政教分離と平和主義)
第4章 靖国神社国家護持法案をめぐる攻防(靖国神社国家護持法案;「慰霊」の論理と批判の論理)
第5章 国際化の中での靖国問題(「公式参拝」実現への促迫;靖国訴訟と戦争責任;小泉首相参拝と新国立追悼施設論)
著者等紹介
赤澤史朗[アカザワシロウ]
1948年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科史学専攻博士課程単位取得退学。立命館大学名誉教授。専攻は近代日本政治史・思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かんがく
12
戦没者の死にどのような意味を持たせるのかという問題に、政教分離(国家神道)の問題が絡み合う。戦後すぐから現代に至るまで、靖国神社がどのような価値観を持ち、政府や社会が靖国神社をどう捉えてきたかが、副題にある「平和」と「殉国」を軸に描かれている。戦後すぐは両立していた2つの概念が次第に分極化していくという流れは、小熊英二の「民主」と「愛国」を思い出した。戦争をどう捉えるかは戦後における永遠の課題だが、時が経つにつれてどんどん戦争を捉えることが出来なくなってしまう。2020/12/24
aruku_gojira
1
靖国神社はいろいろな議論を呼んできたが、大戦後にどのような変化と議論を生じさせてきたのか、これを全く知らなかった。その点で、本書は戦没者の慰霊が「平和」と「殉国」のどちらをも包含する時期があり、その後、はっきりと分離していったことを論じている。 読みやすい本かと言われると、読みにくい本であった。わかりにくかった理由として、推測されるのは、靖国神社が国家に庇護された帝国時代と国内の一宗教法人となった戦後の二つの世界を歩んでいるために、国家機関か宗教なのかアイデンティティが定まらないからであろう。2017/08/26