出版社内容情報
アメリカにとってヴェトナム戦争とはどのような経験だったのか。様々な表象を分析しながら戦争の実相を多面的に描き、その本質に迫る。
内容説明
史上初めて戦場の光景がTV中継されたヴェトナム戦争。単なる軍事支援がいつしか「アメリカの戦争」と化し、大国の威信は大きく傷ついて、時代は一変した。最初期の外交戦略から軍事、報道、写真とプロパガンダ映画、さらに戦後の社会変容、文学や文化への影響まで、多面的な考察を通じてヴェトナム戦争と二〇世紀文明の核心に迫る。
目次
1 事実と印象(戦争は9時から5時まで;アメリカン・グラフィティーズ;天使たちの丘のむこう)
2 印象と表現(アメリカン・ウェイ・オヴ・ウォー;冬の音楽;ヴェトナム・ミステリー・ツアー;ハーツ・アンド・マインズの喪失)
3 表現と象徴(心のなかの死んだ場所;鳥の眼に映る戦争)
4 象徴とメタファー(記念碑;想像力;闇のような緑)
著者等紹介
生井英考[イクイエイコウ]
1954年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。立教大学社会学部教授。専門は映像人類学、アメリカ研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
27
映画・文学・音楽などのポップ・カルチャーを通して、生井英考はヴェトナム戦争はなんだったのかを、極めてジャーナリスティックな手つきで炙り出す。J・G・バラードやマルグリット・デュラスまで引っ張って来るあたり、「想定外」の凝りようで本書に類書にはない膨らみとアウラを与えていると思われる。分厚い割にリーダビリティは高く、ヴェトナム戦争は海の向こうの出来事として高を括っていた私も居住まいを正さなければならないなと思わされてしまった。これだけ「アメリカ」をホットに見渡した本、現地の研究者でも書けるかどうか分からない2019/10/20
くさてる
22
ヴェトナム戦争。その戦争の成り立ちと経過、戦争が産んだ文化とイメージから、現代にまで与える影響について解説する戦争の文化史。主にわたしの基礎知識の少なさから、難しいところや理解しにくいところもあったけれど、素晴らしく読み応えがあった。知的興奮を感じることができた。大著ではあるけれど、この戦争、あるいはアメリカの60年代から70年代の文化に興味がある人にはぜひお薦めしたい一冊です。良かった。2020/07/18
風に吹かれて
17
1987年刊行。コッポラが『地獄の黙示録』を撮影するためにフィリピンにセットを作ったのだが、川を航行していたとき娘が「ディズニーランドのジャングル・クルーズみたい」と言ったのだそうだ。アメリカにとってのベトナム戦争のひとつの見方を表している挿話だ。まだベトナム戦争が「歴史」になっていない時代に書かれたアメリカの諸相。「事実」➡「印象」➡「表現」➡「象徴」と文化やイメージの視点からベトナム戦争を戦ったアメリカを描くユニークなアメリカ論。原稿用紙900ページに及ぶ論稿だが長さを感じさせない著作だった。2016/04/25
いなお
6
攻殻機動隊の「密林航路にうってつけの日」の元ネタ、なんだろう/ベトナム戦争と言えば『フルメタル・ジャケット』と『地獄の黙示録』を観たことのあるだけだったがこの本によって取っ掛かりを得た感じがある。興味のある人にとってうってつけの本であることに間違いはないと思う。2016/12/01
takao
2
ふむ2022/05/30