内容説明
世に世界史と認めてよい書物は一冊も存在しない。あるのは、「つまみ食い」と「切捨て」の積み重ねだけ―従来の歴史叙述を痛烈に批判する著者は、多様な風土・文化の特質を見すえ、それらをひとつながりのものとして動かしていた交易路に着目、歴史の複雑な動きを独自の手法で図解する。前近代アジアの多元世界を俯瞰する、ユニークな教科書。
目次
世界史とアジア
歴史と風土
アジア史の基礎
黄土の文化
中国の北と南
インド文化のひろがり
海洋に生きる人たち
地中海という世界
イラン文化のかがやき
アジアの十字路
西域の文化
漢民族の栄光
絹馬の交易
ステップの道
トルコ=イスラーム
世界史の転換
著者等紹介
松田壽男[マツダヒサオ]
1903‐82年。東京生まれ。東京帝国大学文学部東洋史学科卒業。国学院大学教授、京城帝国大学教授、早稲田大学教授を歴任。文学博士。中央アジア史専攻。内陸アジア史学会初代会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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coolflat
14
中国、東南アジア、インド、中東、オリエント、果ては地中海。中央アジアを結節点とした多元世界ユーラシア大陸の歴史を俯瞰した一冊。世界史は、縦軸である各国史(政治史中心)と、横軸である同時代史で構成されている。本書が書かれた70年代までは、政治史第一主義をとっていたと言うが、この70年代に横軸だけを意識して書き、それを提供したのは素直に凄い。膝を打ったのは、商業路を歴史の主軸にしなければ、歴史を総合に見ることはできないという点だ。特に多元世界形成の基盤となる「中継貿易」を知り尽くさなければ、世界史は語れない。2016/09/13
サアベドラ
11
近代以前のアジア世界の見取り図。初出は1971年。著者は戦後世代の著名なシルクロード史家。ヨーロッパ人の到来以前のアジア諸世界の地形・地勢をユニークな図式を豊富に用いて明らかにしている。解説で山内昌之が書いているように、グローバル・ヒストリー云々が騒がれるようになる遥か以前にユーラシアの東西交渉史に着目し、その構造を提示した著者の先見性は目を見張るものがある。日本の西アジア史研究が長足の進歩を遂げた現在にあっては、若干時代遅れになっている記述が見られるが、ユーラシア史に興味があれば一読の価値あり。2016/06/09
中島直人
10
少し古い本ですが、新たな視点が色々得られて、刺激を受けることが出来たという印象。ちょっと感情的?主観的?と感じられたところは興醒めしたが、全体的にはバランスの取れた勉強になる本だったと思う。2016/11/25
(ま)
1
草原の道、絹の道、海の道2018/03/14
宇六
1
一年ぶりに再読。改めて読むと、(特に「Ⅰ世界史とアジア」や「Ⅱ歴史と風土」などで)過度にヨーロッパの学問を貶め、東洋のそれを持ち上げている観がある。ただ、図を多く用いた解説はユーラシアの歴史を俯瞰するのに役立つはず。固有名詞が少なめで楽に読み進められる点もよい。2017/10/25