出版社内容情報
近代日本への根源的批判を投げかけ続けた自立の思想家・竹内好のアジア論は戦後思想の暗部を撃つ．日本にとってアジアとは何か，大東亜戦争の意味等々を解読する書下し．
内容説明
近代日本への根源的批判を投げかけ続けた自立の思想家、竹内好の１９６３年発表の「日本のアジア主義」は、戦後思想の暗部に大きな楔を打ち込み、いまなお真の解読を待つ。竹内の思想のよき理解者である著者は、この劇薬的論考を実証補強しつつ、日本にとってアジアとは何だったのか、「大東亜戦争」と満州国の意味、ナショナリズムの可能性等々、戦後思想の未決の諸問題を考察する。
目次
日本のアジア主義（竹内好）
アジア主義は終焉したか―竹内好「日本のアジア主義」精読（戦後思想やアカデミズムの封印を破った；「屈辱」のアジア、あるいは中野正剛問題；孫文の講演「大アジア主義」をめぐって；削除された孫文「大アジア主義」の結語；中野正剛から重光葵（「大東亜共同宣言」）まで
「大東亜共栄圏」思想はアジア主義の帰結か
谷川雁の「アジア的なコンミューン」
１９６４年社会転換説
「アジアの繁栄」という言葉
西洋的価値を「包み直す」）
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
5
アジア主義は、膨張主義または侵略主義と完全には重ならない（９ページ）。今の選挙戦では、このままいくと右傾化連立内閣ができそうで、評者はそれを恐れる。ナショナリズムとも重ならないようだ。福沢諭吉の脱亜論は、自身が猛烈なナショナリストということが影響している（51ページ）。また、岡倉天心はアジアは一つという認識をもっていた（94ページ）。大東亜共栄圏構想も、竹内氏の場合、擬似思想という（142ページ）ので、それで国民が多く亡くなっていったのは今でもいたたまらない。平和を願い、二度と過ちを繰り返さない読書とは。2012/12/13
ぺおる
2
「アジア主義」という思想体系の分析。一種の思想史的に読め、比較的平易か。付属の松本氏「アジア主義は終焉したか」については孫文「大アジア主義」講演の分析などが大いに参考になりそう。また『孫文全集』にてあまりにも多い削除や伏字の思想的背景も若干ながら見えて、実りが多かった。2020/06/23
Ai Watanabe
2
えぐ面白い、、、2015/12/03
よしひろ
2
前半は、竹内好の「日本のアジア主義」という論文を収録し、後半にそれを叩き台にした筆者の文章がおさめられている。西郷隆盛永久革命説とか、1964年社会転換説という見方は、刺激的であった。2013/07/08
Ikkoku-Kan Is Forever..!!
2
松本の竹内評価を通して、松本健一の思想がよくわかる。「アジア主義と呼ぶ以外にない心的ムード」がある思想に依拠する形で日本近代史の随所あること。それが一直線にファシズム期の思想として結実するわけではないこと（大東亜共栄圏≠アジア主義）。では、どこで変質？という問い。結果論として存在した型の成立をさせない契機を歴史上に発見できるかが「アジア主義」の最大の課題であることを竹内は言う。「ナショナリズム」のあり方について、同時代的な関心と同時に、「方法としてのアジア」への読みに繋がる形で検討したいテーマでもある。 2013/05/31
