出版社内容情報
所得税のフラット化、法人税率の引き下げ、タックス・ヘイブン利用による租税回避・・・。GAFAはじめ巨大多国籍企業が台頭する中、複雑化し、苛烈を極める「租税競争」。その巧妙な仕組みを解き明かし、対抗していくためにEU各国などの国際社会で模索が進む、旧来の国民国家税制と異なる新しい「課税主権」の在り方を展望する。
内容説明
所得税のフラット化、法人税率の引き下げ、タックス・ヘイブン利用による租税回避…。GAFAはじめ巨大多国籍企業が台頭する中、複雑化し、苛烈を極める「租税競争」。その巧妙な仕組みを解き明かし、対抗手段としてEUなどの国際社会で模索が進む、旧来の国民国家税制と異なる新しい「課税主権」の在り方を展望する。
目次
第1章 資本主義とともに変わりゆく税制
第2章 グローバル化と国民国家の相克
第3章 立ちはだかる多国籍企業の壁
第4章 デジタル課税の波
第5章 新たな国際課税ルールの模索
第6章 ネットワーク型課税権力の誕生
第7章 ポスト・コロナの時代のグローバル・タックス
終章 租税民主主義を問う
著者等紹介
諸富徹[モロトミトオル]
1968年生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は財政学・環境経済学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
46
多国籍企業の租税回避により、課税を自国民に重く課すしかないという逆進的な状況に対し、OECDがいよいよ本腰をあげてグローバル・タックスを構想し始めた状況をタイムリーに概説している。課税(というか減税)競争を回避するための最低税率導入など、かなり興味深い。また国際公共財という観点から、国境を越えた課税とその分配も取り上げている。「国際政府」なる権力が存在しない中、「租税民主主義」を如何に担保しながら現状の国際的枠組で取り組むか、注目していきたい。本書にもあるようにウイルスに国境はない。喫緊の課題だろう。2021/01/09
那由田 忠
22
『資本主義の新しい形』で非物質化を指摘されて、それが多国籍企業によって利用されて各国の主権で最重要な課税権を侵害してきたこと。それに対抗するためOECDでネットワーク化された課税方法が真剣に検討されたという指摘。日本の税制の変化がこの説明でよいかは半分疑問なものの、トランプ時代の状況で書かれたのが残念。パイデン後の変化をぜひ知りたいもの。内容的には同じことの繰り返しで、何かが欠けていると思ったものの何が問題かはわからない。一読の価値はあると思う。2021/02/23
coolflat
16
5頁。1980年代以降の各国税制に最も大きな影響を与えたのは、経済の「グローバル化」と「デジタル化」であった。低税率国やタックスヘイブンの利用による租税回避が容易になったのだ。高所得者層が所得を税負担の低い海外に流出させることを恐れた課税当局は、最高限界税率を引き下げ、所得税をフラット化(最高限界税率を引き下げることで税率構造を、所得の上昇とともに税率が急峻に上昇する形から、緩やかにしか上昇しない形に変えること)していった。高所得者層の所得税負担は大幅に引き下げられ、税制の所得再分配機能が大幅に失われた。2023/03/16
tolucky1962
13
法人減税消費増税で格差拡大。原因タックスヘイブン対策国際法案を示す。低税率国子会社に資産移転で租税回避。世界企業に課税は国家。グローバル化で加速する回避。各国情報交換なく所得税平坦化,法人減税,再配分機能低下。利益移転と税率低減競争で損失。国際組織で課税権移譲,情報交換と課税共通化を検討。ワクチンの世界拡大に国際的経済活動に国際公共財供給のため国際機関が課税するGT必要。世界,国,自治体の中で国に権力集中の古い考えは時代に合わない。GTは具体例。国際機関で調整は苦労が多いでしょう。政治力・外交力も大事。 2021/01/06
紫の煙
11
パナマ文書をきっかけに、グローバル企業や政治家の租税回避が注目された。GAFAに対抗する課税権力が、どう戦おうとしているのか。コロナ禍で各国の財政出動が増えた昨今、具体的議論の進展が期待される。何より、税は公平でなくてはならない。2021/06/13