出版社内容情報
もし三度目の《世界革命》が起こりうるとして、この〈古典的な遺産〉たる書を踏まえる事なしにはあり得ないだろう。マルクスの原理的な思考の深度と強度、そして「ちいさな者たちへの視線」に寄り添いつつ語る、本格的入門書。
内容説明
もし三度目の“世界革命”が起こりうるとして、いまなおこの世界の枠組みを規定している資本制について、最も行きとどいた分析を提供しているこの書を踏まえることなしにはあり得ないだろう。マルクスの原理的な思考の深度と強度、そして「資本制が圧しつぶしてゆくちいさな者たちへの視線」に寄り添いつつ語る、本格的入門書。
目次
第1章 価値形態論―形而上学とその批判
第2章 貨幣と資本―均質空間と剰余の発生
第3章 生産と流通―時間の変容と空間の再編
第4章 市場と均衡―近代科学とその批判
第5章 利子と信用―時間のフェティシズム
終章 交換と贈与―コミューン主義のゆくえ
著者等紹介
熊野純彦[クマノスミヒコ]
1958年神奈川県に生まれる。1981年東京大学文学部卒業。専攻は倫理学、哲学史。東京大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
100
非常にわかりやすい資本論の解説書であると感じました。哲学的な観点というよりもきちんと経済的な分析をされているように感じました。要はマルクスが資本論を構築するにあたっての彼の考え方を整理したように思いました。昔やはり岩波新書で宇野弘蔵さんの資本論をんだときよりもわかりやすかったと思います。年をとったからでしょうかねえ。2018/04/21
ころこ
49
本との出会いのタイミングに因るのだろうが、類書に比べて本書の手堅く落ち着いた語り口は読者の注意を促し、読むのに心地よかった。『資本論』の流れに沿って解説、その中に著者なりの視点が織り込まれている。マルクスの向こう側にヘーゲルがいて、カントの訳業と著作、レヴィナス、本居宣長と広がって、廣松渉で戻って来る著者の仕事のパースペクティヴの中に位置づけられているという信頼があり、本書だけにとどまらず興味が尽きない。類書でも比較的に価値中立的で、格差社会批判や脱成長の主張が無いところが良い。2023/06/04
skunk_c
28
同世代の哲学者による『資本論』の読み解き。『資本論』は決して経済学の書ではなく、資本主義経済とそれを分析した古典派経済学を批判的に解明したものと位置付け、丹念な解説で価値形態から順に解き明かしていく。手元に『資本論』を出して読もうかと思ったくらいだが、手持ちが大月書店版のでかいものなので断念。市場経済をイデオロギーと見なす視点にははっとさせられた。一方、金融のところでは時間の問題を論じておきながら、利潤率の平均化のところでは時間が完全に捨象されている。このあたりの矛盾は原点を当たるべきか。刺激的だった。2018/03/12
浅香山三郎
15
要再読。Ⅳの「市場と均衡」が頭に入りにくかつた。近年、マルクスの経済学や哲学について、再読を試みる本が多いが、本書は「マルクス経済学」といふ経済学のカテゴリーからではなく、「経済学批判」といふ「経済学」の枠組み自体を批判する本来のマルクスの立場に立脚した読みを展開する。分かりづらかつた「市場と均衡」以外も、あらためてまう少し味読してみたい。2018/11/03
くまさん
15
資本論全巻への相当に深い理解が、平明でありながら内容を少しも薄めることのない論の運びに滲み出る。「哲学」であるのは、私たちの生の基礎的な条件がいかに形づくられているかを考察しているから。「資本制はすべての生産を染めて、あらゆる地域を商品生産のなかに呑み込んでゆくことで、世界を市場に変えてゆきます」。その過程を「自然」なものとして肯定するのは、グローバル化や支配権力を「正統化」することだという。「わが亡きあとに洪水は来たれ」という標語からこの国の状況を示唆するくだりは、この著者にあって本当に貴重だった。2018/05/06