出版社内容情報
非正規労働者が増え、雇用が身分化して、中流層が没落し、貧困層が膨張している。そこから抜け出す道は?
内容説明
労働条件の底が抜けた?派遣はいつでも切られる身分。パートは賞与なし、昇給なしの低時給で雇い止めされる身分。正社員は時間の鎖に縛られて「奴隷」的に働くか、リストラされて労働市場を漂流する身分―。こんな働き方があっていいのか。この三〇年で様変わりした雇用関係を概観し、雇用身分社会から抜け出す道筋を考える。
目次
序章 気がつけば日本は雇用身分社会
第1章 戦前の雇用身分制
第2章 派遣で戦前の働き方が復活
第3章 パートは差別された雇用の代名詞
第4章 正社員の誕生と消滅
第5章 雇用身分社会と格差・貧困
第6章 政府は貧困の改善を怠った
終章 まともな働き方の実現に向けて
著者等紹介
森岡孝二[モリオカコウジ]
1944年大分県生まれ。関西大学名誉教授。経済学博士。香川大学経済学部卒業。69年、京都大学大学院経済学研究科博士課程退学、83年、関西大学経済学部教授(2014年3月まで)。専門は企業社会論。大阪過労死問題連絡会会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
79
ここ30年くらいで経済界や政府が「雇用形態の多様化」を進めてきた。しかしここで生まれてきたのは「雇用身分社会」という雇用のカースト制度のようなものだ・「あゝ、野麦峠」という映画があった。借金のかたに甘い言葉で女工として売られ過酷な環境の中で働かされるという構図について当時と現在もそう変わらないのではないかと書いている。奨学金返済のために入った会社で厳しいノルマや規則で体調を壊しあげく自殺してしまう。労働基準法改正の動きがある今気になって読んでみた。決して働きすぎなどではなく働かされすぎということに気づく。2017/01/28
どんぐり
69
大多数が正社員・正職員であった時代は終わった。総合職正社員、一般職正社員、限定正社員、嘱託社員、契約社員、パート・アルバイト、派遣労働者など、労働者の「雇用形態の多様化」が進んでいる。労働法による労働者の保護が弱まってきた現代では、恵まれた雇用身分である正社員もいつ労働市場を漂流する身分におかれるかわかったものではない。著者は、労働者の身分が引き裂かれ、雇用の不安定化が進み、正規と非正規の格差にとどまらず、それぞれの雇用形態が階層化し身分化することによって作り出された現代日本の社会構造を「雇用身分社会」と2016/02/04
佐島楓
47
ネットの言説を資料として使うより、実際にインタビューを行ったほうが良いのではないだろうか。2016/01/11
壱萬弐仟縁
44
雇用・就労形態のあいだには雇用の安定性の有無、給与所得の大小、労働関係の優劣、法的保護の強弱、法的保護の強弱、社会的地位の高低において、身分的差別といえる深刻な格差が存在(17頁)。派遣労働は雇用形態の多様化の流れから生まれたからといって、史的経緯からすると派遣を単純な雇用一形態とみなせない(83頁)。説明会では、運転免許証、預金通帳、携帯のみ(89頁)。男性のパート、アルバイトで年収150万円未満は6割(193頁)。男性では、非正規未婚率は正規の1・8倍(197頁)。少子化対策いうなら、ここにメスを。2016/01/05
AICHAN
36
図書館本。この30年の間に日本の雇用環境はがらりと変わった。正社員の終身雇用制は崩れ、正社員は奴隷的に働かせられるかリストラされ、パートは低時給で便利に使われ、派遣はいつ切られるかわからない不安定な立場。公務員でも非正規職員が増えている。日本の非正規社員は全体の4割にも。そして一部大手企業の役員とキャリア官僚のみが甘い汁を吸っている。まるでアメリカのような格差社会になっている。今の日本は本当に深刻な状況に陥っている。多くの若者は将来に希望を持てず家庭を持つ勇気を持てないでいる。こんな国家が繁栄するだろうか2017/03/17