出版社内容情報
とある一人のシベリア抑留者がたどった人生。そこから戦後日本の姿と戦争体験の意味が浮き彫りになる。
内容説明
とある一人のシベリア抑留者がたどった軌跡から、戦前・戦中・戦後の日本の生活面様がよみがえる。戦争とは、平和とは、高度成長とは、いったい何だったのか。戦争体験は人々をどのように変えたのか。著者が自らの父・謙二(一九二五‐)の人生を通して、「生きられた二〇世紀の歴史」を描き出す。
目次
第1章 入営まで
第2章 収容所へ
第3章 シベリア
第4章 民主運動
第5章 流転生活
第6章 結核療養所
第7章 高度成長
第8章 戦争の記憶
第9章 戦後補償裁判
著者等紹介
小熊英二[オグマエイジ]
1962年、東京生まれ。1987年、東京大学農学部卒業。出版社勤務を経て、1998年、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了。現在、慶應義塾大学総合政策学部教授。『社会を変えるには』(講談社現代新書、2012年、新書大賞)、『1968』上下(新曜社、2009年、角川財団学芸賞)、『“民主”と“愛国”―戦後日本のナショナリズムと公共性』(新曜社、2002年、毎日出版文化賞、大佛次郎論壇賞)、『単一民族神話の起源―“日本人”の自画像の系譜』(新曜社、1995年、サントリー学芸賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
366
著者が戦前戦後を生き抜いた父にインタビューした集大成。こういう証言て大事だなと思った。日本も過去にそれだけ国家存亡の危機があったという事を記憶に残す事が難しいんだろうな。戦争に負けるという事がいかに大変な事なのか、逆に戦後はこういう過酷を乗り切った日本が登っていくサクセスストーリーに感じた。2016/06/24
遥かなる想い
248
2016年新書大賞第2位。 自分の父の人生を題材に、 日本の戦前・戦中・戦後の側面を描く。 著者自身が語っているように 対象人物が 高学歴ではなく、従来の学徒動員とは 違う視点の体験が記載されており 新鮮な 気がする。 先輩たちが生き抜いた昭和の日々..後世に 何をどう伝えるのか..そして若者たちは この本を読んで何を感じるのか。 歴史に学ぶという言い尽くされた言葉を 改めて実感する、そんな本だった。2016/05/07
へくとぱすかる
134
著者自身のお父さんからの聞き取り。お父さんは1925年生まれ。裕福とはまるでほど遠い少年時代を送り、一兵士として二等兵のまま終戦を迎え、シベリアに抑留される。戦後も多くの苦難が続くが、お父さんは、社会情勢に翻弄されながらも、生活のために日々を必死に生きるが、その言葉は実に的確に物事を捉え、語っている。苦労して生きてきた人の証言は何と重いのだろう。2019/06/05
kinkin
121
著者の父である小熊謙二。彼が生まれた1925年から学生、徴兵、シベリア抑留、帰国、病気、仕事、家族を通して彼の人生を追った本。読んで感じたのはどこのどんな人であれその人の生涯はその人にとってはドラマではないかということだ。戦前、戦中、戦後と言う言葉も今の若い人たちには通じなくなっている思う。私の父は1928年生まれ、謙二氏とほぼ同世代だ。生前聞いたことと重なることがいくつもあった。父からは貧乏くじを引いた世代とよく聞いた。今とは比べ物のならない苦労をしたと思う。そんな人達も少なくなった。昭和が遠のく・・・2019/08/03
rico
109
一人の人間の人生をたどることは、その時代をたどること。小さな「個」の経験や想いをすくいあげ、形や意味を与える。戦前・戦中・戦後、そして平成。1世紀近くにわたるオーラルヒストリー。シベリア抑留を経験した稀有な語り手である父。優れた聴き手・書き手である社会学者の息子。どちらが欠けてもこの1冊は生まれなかった。収容所生活の壮絶さは圧倒的だが、そこに至る道筋とその後のくらしまで描くことで、あの戦争を「点」でなく俯瞰的な視座を持って捉えることを後押ししているような気がする。人を知ることは世界を知ること。圧巻でした。2023/08/25